キヤノン、御手洗会長「余裕の再任」も消えぬ難題 賛成率は90%に急回復、後継者選びの行方は

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今回の総会で可決した選任により、キヤノンの取締役会の姿は大きく変化した。

キヤノンの取締役再任に対する賛成率推移

従来の社内取締役は御手洗氏、田中稔三・副社長CFO(最高財務責任者)、本間利夫・副社長CTO(最高技術責任者)の3人で、平均年齢は80を超えていた。

しかし今年からは、従来のメンバーよりも20歳ほど若い3人が加わる。海外営業の実力者と称される小川一登氏(65)、産業機器事業のトップ、武石洋明氏(60)、経理での経験が長い浅田稔氏(61)だ。3月28日付で小川氏は取締役副社長に、他の2人は専務取締役になった。

キヤノンは取締役増員の理由のうちに、次世代の経営者のスキルアップと育成を挙げている。実際、「世代交代の準備」をうかがわせる顔ぶれと言えるだろう。

後継者選びにおける社外取の責任

社外取締役も従来の2人から4人に倍増させた。2021年から務めてきた大和総研・元副理事長の川村雄介氏に加えて、前述の伊藤氏、元最高裁判所判事の池上政幸氏、元環境事務次官の鈴木正規氏が新たに選任された。

明治安田生命や松竹、ロート製薬で社外取締役を務める上村達男・早稲田大学名誉教授は、キヤノンのような長期政権の会社で後継者を指名するに当たって、社外取締役が果たすべき役割は大きいと指摘する。

「社外取締役には日常的な注意義務が要求される。不明点があれば質問し、問題がなければ決定に対し信任を与えることで、経営による判断に正当性の根拠を付与する。この信任は訴訟など有事のときに役立つが、長く経営トップを務めた人の後継者選びは、有事に準じた局面と言える。選任の基準や合意形成のプロセスを確認することが求められる」(上村氏)

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