「データドリブン信者」が陥る大きな落とし穴 ミス、改ざんは日常茶飯事。信用できぬ舞台裏

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予想とは、人間にとって不可欠のものである。たいていの場合、私たちは予測なしでは何かを知覚したり、理解したりすることができない。

スマートフォンの予測変換機能が人間の言葉のよくある単語配列をモデル化して、次に入力する内容を推測するのと同じように、私たちはこれまでの経験をもとに世の中をモデル化して、近い将来起こりそうなことをより正確に予想しようとする。

原因分析と軌道修正で予測が正確になる

予測は私たちにとって物事を理解するための核となる要素であるため、それが世の中の解釈にどれほどの影響を与えているか、自覚しにくい。チェスのグランドマスターで、プロのギャンブラーでもあるジョナサン・レビットは、まず先を読み、次に予測できなかったことを反省することで、予想の精度を上げるべきだと主張している。

「チェスから学んだのは、先を見越して考え、できるかぎり先を見ようとする姿勢だ。人生では、次に何が起こるかまったくわからないまま物事を進めるよりも、何かを予想したほうがよい場合がほとんどだ。チェスは、自分の思考の限界について、多くのことを教えてくれる」

世界でもっとも優れた予測家たちは、自分の予測、つまり未来への期待を書き留めて、それを実際に起きた出来事の展開と比較するというサイクルを常に繰り返している。その過程で、失敗した予測を分析し、自身の予測能力について正直であり続けようとしている。

私たちは、みずからの知識や経験にもとづいて期待を形成し、予測を立てている。だからこそ、そうした予測がどこで間違ったかを追跡することが役に立つ。

ダニエル・シモンズ 心理学者

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Daniel Simons

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校心理学部教授。同校の視覚認知研究所ディレクター。過去にハーバード大学心理学部の助教授および准教授も務める。カールトン・カレッジで学士号を、コーネル大学で実験心理学の博士号を取得。視覚認知と視覚認識の分野で世界有数の研究者であり、人間の知覚、記憶、認識の限界について先駆的な発見をしてきた。「見えないゴリラ実験」で、2004年にイグ・ノーベル心理学賞をチャブリスとともに受賞している。

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クリストファー・チャブリス 心理学者

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Christopher Chabris

ペンシルべニア州の統合医療機関である「ガイジンガー」教授。行動・意思決定科学プログラムの共同ディレクターおよび行動洞察チームの教員共同ディレクターを務める。過去にハーバード大学やユニオン・カレッジでも教鞭を執る。「心理科学協会(Association for Psychological Science)」フェロー。主な研究テーマは意志決定、注意力、知能、行動遺伝学。シモンズとの共著に『錯覚の科学』(文藝春秋、21カ国で出版)がある。

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