これから数十年間に世界の所得拡差は縮小する--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

技術とグローバリゼーションの急激な進展は、高熟練労働者に有利に働き、所得と富の不平等は過去最高水準にまで拡大している。その結果、新たな階級闘争が生じ、大衆迎合的な政府が生まれ、所得再分配を強化し、国民の経済生活の管理が強まる、という事態が起こるのだろうか?

所得の不平等は、米国であれ、欧州であれ、中国であれ、社会の安定を揺るがす最大の脅威であることに疑問の余地はない。しかし、うまく機能すれば、市場は最終的に社会安定化の役割を果たすという事実が忘れられている。市場の力が働けば、高熟練労働に対するプレミアム(追加的な賃金)が大きくなり、企業が人材コストを節減しようとする誘因もそれだけ大きくなる。

チェスの世界の動きは一つの傾向を明確に示している。それは、今後10年のイノベーションが相対賃金に与える影響が、過去30年と比べて極めて異なったものになるかもしれないということだ。

19世紀末から20世紀初頭にかけ、驚くほど創造的なゲームを行う箱形のチェスのゲーム機“オートマタ”が世界各国を巡業した。この機械は“ターク(トルコ人)”と呼ばれ、ナポレオンやベンジャミン・フランクリンのような優秀な人々を次々と打ち負かした。人々はそのゲーム機の秘密を見破ろうと試みたが、実際には小部屋に人が隠れてタークを操作していたことがわかるまでに、数十年かかった。

現在では、事態は逆転している。過去10年、パソコンのチェスのプログラムは、最高のチェス名人をしのぐまでになっている。最近、フランスのチェス協会は、チェスのトッププレーヤー3名が試合中にコンピュータを使って不正をしたとして、資格を停止した。

かつては創造的な人間の独占領域と考えられていたが、現在ではコンピュータが支配するようになった活動の例は多くある。

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