中国「LiDAR」大手、販売急増でも楽観できない事情 禾賽科技、営業CF黒字化の裏で値下げ圧力上昇

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市場調査会社の蓋世汽車研究院のデータによれば、禾賽科技は中国のLiDAR市場で2023年に37.3%の市場シェア(新車への搭載台数ベース)を獲得し、業界トップを走る。禾賽科技によれば、同社製のLiDARは自動車メーカー16社の60車種以上に採用されているという。

中国のEV最大手のBYDもLiDARの積極採用に転じた。写真は同社傘下の高級ブランド「仰望」から2024年に発売予定の超高級EV(仰望のウェブサイトより)

また、財新記者の取材によれば、中国のEV最大手の比亜迪(BYD)が2023年に禾賽科技製のLiDARの採用を決めた。BYDは(コストアップにつながる)LiDARの搭載に以前は消極的だったが、後に方針を転換。2024年1月に開催したイベントで、年内に発売予定の10車種以上に搭載すると発表した。

BYDの新型車のうち何車種が禾賽科技製のLiDARを採用するかについて、両社は開示していない。だが中国市場におけるBYDの存在感を考えれば、禾賽科技にまとまった規模の受注をもたらすのは確実だろう。

LiDAR業界に早くも淘汰の波

それでも、禾賽科技の将来を楽観するのは早計だ。決算報告書によれば、2023年の粗利率は35.2%と前年(39.2%)より低下した。その主因は、利幅が相対的に小さいADAS向けLiDARの販売比率が増えたことだ。

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さらに、2023年に始まった中国自動車市場の価格競争の激化で、部品サプライヤーに対して値下げを求める完成車メーカーの圧力が高まっている。LiDARも例外ではなく、禾賽科技は(大口契約を獲得するために)販売マージンの縮小を余儀なくされた。

「LiDAR業界は残酷な淘汰の波にさらされている。生き残るための経営力を欠く企業は、2年以内に消滅する可能性が高い」。禾賽科技の李一帆CEO(最高経営責任者)は決算説明会で、そう危機感をあらわにした。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は3月12日

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