優良マンションの「認定制度」が抱える思わぬ死角 「居住者名簿」の扱いが管理会社によって違う

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そして、管理会社は管理費・修繕積立金の集金、日々の支払い、帳簿の記帳業務を請け負っている。つまり管理組合のサイフの中身を知り尽くしているのだ。

営利企業である以上、管理会社には管理組合の利益よりも自社の利益を優先する権利がある。「任せておけば悪いようにはしないでくれるだろう」という甘い考えだと、管理組合は管理会社にとって都合のよいサイフになってしまう。だからこそ国は管理会社から自立し、自律的に管理運営する姿をマンション管理組合に求めるのだ。

それゆえに管理計画の認定に当たっては、管理組合が主体性を持って管理を行っているかがチェックされる。例えば、長期修繕計画では、妥当な計画があるかどうかだけでなく、修繕積立金の残高が十分にあることも基準になっている。不足分を穴埋めするために、一時金の徴収や金融機関からの借り入れをしないといけないようでは認定を取れない。

健全な「コミュニティ形成」も必須条件

国土交通省の資料。マンション管理計画認定制度のねらいとして、管理適正化が推進されるとしている(編集部撮影)

国はマンション内はもちろんのこと、マンション周辺の住民との間で、健全なコミュニティが形成されていることも認定要件に挙げている。マンション内では親睦会や除草活動を通じた住民間の活発な交流を、周辺の住民とは自治会活動を通じた、地域ぐるみの防災訓練などを推奨している。

「人の目」が日常の防犯上有効であることはいうまでもないが、災害発生時にこそ住民間の連携は効果を発揮する。防災委員会を設け、非常時に救助を必要とする独居高齢者を事前に把握し、管理組合として防災備蓄や発電機を備え、災害発生時の行動計画を盛り込んだ消防計画を策定していれば、認定に際しては有利に働く。

逆に、管理会社しか区分所有者や居住者の連絡先を知らないようだと、災害発生時に適切な対応はとれない。日常的にも、管理規約や使用細則に違反している住戸への対応が、管理会社の担当者次第で放置されかねない。

隣人との交流を避けたくてマンション暮らしを選択する人が一定割合存在するのは事実だが、それはマンションの資産価値を守るうえではマイナスに働く。例えば、独居高齢者が孤独死すれば、その居室は事故物件となり、買い手も借り手もつきにくくなる。そうなれば管理費・修繕積立金の滞納が始まる可能性が高い。近所付き合いの煩わしさが少ないマンション生活だが、コミュニティの形成は資産価値の維持には必須条件なのだ。

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