「札幌ドーム」と「日ハム新球場」の残酷な明暗 ネーミングライツの応募もなく苦戦が続く

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対照的に札幌ドームは「開閉会式会場に」との期待もあった札幌冬季五輪も頓挫。ネーミングライツも不発となっている。

札幌市の収支見通しでは、2023年度決算では純損益2億9400万円の赤字となるものの、2024年度には黒字転換し、トータルの収支は900万円の黒字を確保するとしている。しかし毎日新聞の報道によると、3月14日の市議会第1回定例会第2部予算特別委員会で、2023年度は想定よりも赤字幅が拡大する見通しと明かされた。今のところ打つ手はことごとく裏目に出ている。

思い出す「大阪ドーム」にまつわる迷走劇

関西在住の筆者は「大阪ドーム」にまつわる迷走劇を思い出す。関西財界の意向で1997年に開業した大阪ドームは、第3セクターの株式会社大阪シティドームによって運営された。周辺には商業施設も作られ、新たな賑わいが創出されるかと思われたが、本拠とした近鉄バファローズの観客動員は伸び悩み、球場使用料の負担にもあえいだ挙句「球界再編」でオリックス・ブルーウェーブと合併してしまう。

第3セクター破綻後、周辺施設が撤去された2011年当時の京セラドーム(写真:筆者撮影)

大阪シティドームも経営が行き詰まり、2005年10月に会社更生法の適用を申請。結局、新球団オリックス・バファローズの親会社であるオリックスグループが全株式の90%を取得するスキームで再生された。また大阪ドームもオリックスグループの所有となった。

大阪シティドームが経営破綻した当時、テナントはほとんど退店し、周辺の商店街も火が消えたようになっていたが、跡地にはイオングループが誘致され、大きな商業施設ができる。

大阪ドームはネーミングライツによって「京セラドーム大阪」となる。使用料は公表されていないが年間数億円だとされる。

21世紀以降、大阪では大阪ワールドトレードセンタービル(WTC)、なにわの海の時空館など第3セクターの事業の経営破綻が相次いでいた。大阪ドームもその1つだが、そういう事例を目の当たりにして関西では「第3セクターで商売なんかできるはずがない」と不信感を抱く人が多い。

大阪ドームの場合、オリックスグループが「白馬の騎士」になってドームの破綻を救った。このところのリーグ3連覇で、京セラドームの開幕シリーズはすでに売り切れの活況を呈している。

しかし札幌ドームは本来なら「白馬の騎士」になるはずのファイターズを自ら追い出してしまった。筆者などは「夏の甲子園」を札幌ドームに誘致したらどうか、と思うが、それくらい荒唐無稽な案でも採用しない限り、札幌ドームの浮上は難しいのではないだろうか。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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