天才「ガンディーニ」シャイな彼が残した遺言 ミウラやカウンタックを生んだデザイン哲学

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大型エンジンがシートの後ろに位置するミッドマウントエンジンレイアウトであるが、それまで主流であったフロントエンジン・スポーツカーを見慣れた目にも違和感のない、絶妙な筆加減であった。ミウラは大ヒットし、まだ歴史の浅いランボルギーニの名を世界に轟かせる重要な役割を果たした。

大排気量エンジンをミッドマウントするミウラのレイアウトがよくわかるカット(写真:Lamborghini)
大排気量エンジンをミッドマウントするミウラのレイアウトがよくわかるカット(写真:Lamborghini)

不可能を可能に変えたエピソード

ガンディーニは、オーケストラ指揮者の父の元に生まれた。フリーランスのデザイナーとして生計を立てていたが、自動車開発に関する専門的な教育を受けたことはない。しかし、彼はデザインの才能はもちろんであるが、エンジニアとしての深い知識をも持ち合わせていた。

彼とともに、ミウラ、そしてカウンタックの開発をランボルギーニのエンジニアとして行ったパオロ・スタンツァーニはこう語った。

「彼とは何時間でも語り合った。恐ろしいほど新しい技術に関する知識を持ち、アイデアに溢れていた。カウンタックは、シザースドア(上下に“ハサミ”のように開くドア)の採用など、ギミックに溢れていると称されることもあるが、あれはドライバーがクルマの前方に座るというミッドマウントエンジンの特製を生かすためのレイアウトへの必然から生まれたものだった」

筆者のインタビューの答えてくれた生前のパオロ・スタンツァーニ(筆者撮影)
筆者のインタビューに答えてくれた生前のパオロ・スタンツァーニ(筆者撮影)

さらにスタンツァーニは、「面白いエピソードがある」と次のように言った。

「あの大きく重いシザースドアを支えるダンパーなど、この世に存在しないから、『そのアイデアは実現不可能だ』という反対意見を述べたエンジニアがいた。すると数時間後に、その“大きなダンパー”を手にガンディーニが戻ってきた。彼曰く『航空機ではフツウに使われるパーツだよ』と。彼の幅広い知識には目をむいたものだ」

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