日本の半導体産業「世界から後れる」歴史的事情 日本の半導体産業は世界から取り残されている

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AI(人工知能)のディープ・ラーニング(深層学習)の過程でNVIDIA製のGPU(Graphics Processing Unit)という高性能半導体が用いられるため、これに対する需要が増大している。この背後には、AIの著しい進歩がある。AIに注力しているMicrosoftの株価が上昇し、同社の時価総額は世界一になった。

また、製薬産業が大きく変わっている。AIの活用で、新薬の開発期間が著しく短縮されたのだ。コロナのワクチンも、AIによって驚くべき短期間で開発された。アメリカの製薬会社イーライ・リリーの株価は、年初来3月初めまでに1.31倍となった。いまや同社は、時価総額ランキングで、世界第10位だ。

半導体というよりは、AIが重要

このように、AIは、アメリカの産業構造を大きく変えようとしている。これは、パラダイムの転換と言ってよい変化だ。

重要なのは、半導体というよりは、AIなのである。

株価上昇の背後には、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)による利下げの期待があると言われる。しかし、AIと半導体がもたらす変革は、そうしたこととは無関係であり、政策の変更によらず、確実に進行するものだ。

日本でも、半導体製造機のメーカーである東京エレクトロンの株価は、今年の初めから3月5日までの間に、2797円から3838円まで、約1.4倍に上昇した。上昇率は、NVIDIAなどに比べると低いが、ASML並みだ。また、半導体検査装置のアドバンテストも、同期間に株価が1.56倍になった。

この両者とも「値幅株」と言われるもので、これが日経平均に大きな影響を与える。終値が4万円を超えた3月4日、日経平均は前取引日から324円上昇したのだが、この2社だけで150円超引き上げた(2024年3月5日付朝日新聞「株式市場過熱、潜む危うさ」)。

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