ソ連国営ラジオ、「鉄のカーテン」を越えた肉声 『MOCT 「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人』書評

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MOCT(モスト) 『「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人』青島 顕著
MOCT(モスト) 「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人(青島 顕著/集英社/1980円/264ページ)
[著者プロフィル]青島 顕(あおしま・けん)/毎日新聞東京社会部記者。1966年生まれ。91年早稲田大学卒業、毎日新聞社入社。西部本社整理部、佐賀、福岡、内部監査室委員、社会部編集委員などを経て現職。共著書に『徹底検証 安倍政治』『記者のための裁判記録閲覧ハンドブック』。

ロシア語で橋を意味する「MOCT」。この言葉をタイトルとする本書は、ソ連の国営ラジオ局・モスクワ放送の日本向け放送に携わった人々の証言で構成される、取材の記録だ。当時、社会主義陣営を率いる超大国・ソ連から届けられた、日本人のアナウンスによる声。それは「架け橋」だったのか。それとも国策の宣伝か。冷戦下では、素直に渡るのが難しい橋だったことは言うまでもない。

物語は1970年代前半、長髪にジーンズでギターケースを抱えてモスクワ入りした25歳の青年が、ビートルズ「バック・イン・ザ・U.S.S.R」(ソ連に帰還)を番組内で流してしまう話から始まる。デタント(緊張緩和)の時代とはいえ、西側のロック音楽が御法度とされていたソ連にあっては、物議を醸しかねない危険な選曲だった。

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