「もうトラックは降りる」運転手たちが語る辛さ 「2024年問題」対策への現場の強烈な違和感

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長い場合だと1週間以上、車内での寝食生活を送るトラックドライバー職は、全国各地の絶景絶品を楽しみながら1人走れる「旅仕事」だ。しがらみなく仕事がしたいクルマ好きには、まさに天職である。

何より、かつてのトラックドライバー職は「3年走れば家が建ち5年走れば墓が建つ」とまで言われるほど、きつくても走った分だけ稼げる「ブルーカラーの花形業」だった。業界も、「仕事はキツいが走った分だけ稼げる」を最大の“強み”として人材を集めてきたのだ。

「過酷」で「稼げない」職業になったきっかけ

そんな業界を一変させた大きなきっかけがある。1990年の物流2法における「規制緩和」だ。

これにより業界に新規参入しやすくなったことで、それまで4万社ほどだった運送事業者が6万3000社に急増。多重下請構造ができあがったうえ、翌年にはバブルが崩壊。熾烈な荷物の奪い合いが起きた。

労働集約型産業である業界は、運賃を下げ、検品や仕分け、棚入れなどの付帯作業を「おまけ仕事」として提供することで、競合他社との差別化を図るようになり、結果、これまで以上に過酷なのに稼げなくなったのだ。

その当時、「稼ぎたい」とトラックに乗り始めた若手ドライバーは、現在50代。大型トラックドライバーの平均年齢も、現在約50歳だ。若いころ「ひとりしがらみなくガッツリ稼ぎたい」と入ってきた彼らから「もっと走りたい」や「しがらみだらけ」、「稼げないなら辞める」という声が出ることは何ら不思議ではないのである。

先の規制緩和によって、現場にもたらされたものがある。それが「荷主至上主義」だ。ドライバーの労働時間の長さもこの古い商慣習によるところが大きい。

その最たる原因になっているのが「荷待ち」だ。現場では、指定の時間になってもドライバーが荷主の都合で敷地内に入れてもらえないことが常態化している。企業間輸送の場合「時間通りに荷物の受取人が対応してくれなければ不在票を置いてその場を立ち去る」というわけにもいかず、呼ばれるまでその場でひたすら待ち続けなければならない。

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