福島の雪と寒さが生んだ会津若松城「赤瓦」の"美" 白い壁に映える赤い瓦、紅白の配色にうっとり

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また、日本海から新潟県を通過して冷たい季節風が強く吹きます。会津若松市の東にある猪苗代湖では、波しぶきが強風に吹かれて岸辺の木に着いて凍る「しぶき氷」が見られます。全国的にみても珍しい現象です。

雪解け水や猪苗代湖などの水源に恵まれ、肥沃な土壌で米どころとなっています。

瓦に釉薬をかけ「凍み割れ」防ぐ

会津若松城といえば、白い壁に映える赤い瓦です。紅白の美しい配色にうっとり見惚れてしまうのは、きっと私だけではないはず!

瓦が赤い理由は美を追求したためではなく、豪雪地帯ならではの工夫です。一般的な黒い瓦は粘土でできているので、雪が降ると水分を吸収してしまい、その水分が瓦の中で凍ったときに瓦が内部から割れてしまいます。これを「凍(し)み割(わ)れ」といい、雪が多い地域の建物の課題です。

そこで、水分が瓦の中にしみこみにくくするために、瓦に鉄分入りの釉薬(ゆうやく)をかけて焼きました。窯の中で高温で焼くことにより鉄が酸化して、瓦の色が赤くなったのです。雪と寒さへの対策をした結果、美しい見た目にもなって、一石二鳥です。

城主・保科正之によって「赤瓦」に

築城当時の会津若松城は黒い瓦で、江戸時代に城主になった保科正之(ほしなまさゆき)が赤瓦にしたと記録があります。保科正之は、三代将軍・徳川家光の弟です。

その後、戊辰戦争のときに砲弾を受けて天守が傾いたため、明治時代に取り壊されました。

現在の天守は1965(昭和40)年に再建されましたが、はじめは黒い瓦でした。2011(平成23)年、赤瓦に葺(ふ)き替えられて江戸時代の姿を鑑賞できるようになったのです。現在、天守に赤瓦を頂いている姿が見られるのは、会津若松城のみです。

雪が積もった天守
赤瓦が雪に覆われ、真っ白になった天守が美しい(『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』より)
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