ドラマ「不適切にも~」昭和世代の部長が沼る理由 平成世代の「働き方」と「働きがい」の狭間で

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バブル経済が崩れていく平成初期に青春を過ごし、リーマンショック/東日本大震災前後に、狹い門をくぐり抜けて社会人になり、さぁ、ようやっとこれから脂の乗り切った会社員になるタイミングで、コンプライアンスと「働き方改革」のがんじがらめになっている世代。

第1話・第2話の終盤のミュージカル・シーンで、阿部サダヲ演じる小川市郎が歌い上げた言葉は、ドラマの展開上は「昭和のダメおやじ」の言葉となるが、実は「平成世代」が抱える葛藤に寄り添ったもので、そこに元管理職の私はグッときたのだ。

管理職時代、もっとも頭を悩ませたこと

「働き方改革」というテーマの下で語られるのは「昭和世代」と「Z世代」寄りの極端で一面的なものが多い。だがつい3年前まで管理職だった身からすると、このテーマは――そんな簡単なものではまったくない。

管理職時代、もっとも頭を悩ませたのがワークシェアリングだ。上司からは「もっと働かせろ、でも働かせてはいけない」という何ともな指示が飛び込んでくる。部下からは「あの仕事は/あの人とはもっと働きたい、でもあの仕事/あの人とは働きたくない」という陳情が飛び込んでくる。

しかし私の側に機械的な解法はない。この矛盾を振り出しにして、地を這うような説得、調整、寝技が始まる。それでも100点満点の解などなく、結局誰かに不本意な思いをさせることになり、落ち込む。

矛盾の本質は「働き方」と「働きがい」のぶつかりだと考える。「労働時間短縮・メンタル保全」と「承認欲求・成長欲求」のぶつかり。にもかかわらず最近の「働き方改革」論議は、往々にして、後者「働きがい」の視点(平たくいえば、部下がやりたい/成長する仕事を、ちょっと無理してでもやらしてあげたいという視点)が欠如している。いやいや、そこを無視していいのなら、地を這うような説得、調整、寝技なんていらないよ。

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