「1社だけ異質な計画」サントリーがジン強化の訳 レモンサワー的な位置付けを狙っていけるか

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一方、ROKUは桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒、柚子という日本らしさ溢れる素材を使用し特徴を作っています。日本人にはもちろんのこと、海外の消費者もエキゾチシズムを感じられるであろうフレーバーを備え、プレミアムなクラフトジンのカテゴリーですでに評価されています。

ジントニックだけでなく、バーシーンで人気のマティーニ、ネグローニ(ジン、カンパリ、ベルモットのカクテル)でも個性を発揮してくれそうです。

「ROKU」の最大のライバル

その「前哨戦」として注目したいのが、日本のジンカテゴリーにおけるサントリーと、スピリッツ業界世界最大手、フランスのペルノ・リカールの競争です。同社は2020年3月に「季の美 京都ドライジン」を手がける京都蒸溜所と資本提携しました。

「季の美」は和風素材を前面に押し出した日本産クラフトジンとしてROKUに先行して2014年に発表され、バーシーンでは根強いファンがおり、ペルノ・リカールからの出資金は主に、「季の美」の需要増に応えるための、「新たな最新鋭の蒸溜所建設に使用される」としていました。実際、さまざまな商品を展開しており、価格帯、コンセプトもROKUと近いので国内外において競合すると筆者は見ています。

こうした競争の中で、「世界に打って出るための日本らしさという個性」が確立され、「プレミアムクラフトジンの飲用シーンにおける定着」が進めば、翠というジンの評価も間接的に上がっていくのかもしれません。

沖 俊彦 CRAFT DRINKS代表

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おきとしひこ / Toshhiko Oki

1980年大阪府生まれ。酒販の傍らCRAFT DRINKSにてクラフトビールを中心に最新トレンドや海外事例などを通算650本以上執筆。世界初の特殊構造ワンウェイ容器「キーケグ」を日本に紹介し、販売だけでなく導入支援やマーケティングサポートも行う。2017年、ケグ内二次発酵ドラフトシードルを開発し、2018年には独自にウイスキー樽熟成ビールをプロデュース。また、日本初のキーケグ詰め加炭酸清酒“Draft Sake”(ドラフトサケ)も開発。ビール品評会審査員、セミナー講師も務め、昨年は大学院にて特別講義も。

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