「また来た」社長にとって給料日は恐怖でしかない 資金繰りに追われて未来が見えなくなることも

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もう少し詳しく説明しましょう。手元の資金が1億円あるとして、キャッシュフロー上で毎月1000万円ずつ赤字だったとしたら、単純計算で10カ月間は会社を維持できます。

「将来の成長に向けて、手元にある資金を注ぎ込んでいこう」

多くの社長はそう考えます。ただし、10カ月後までに資金手当てをしないと当然、お金が回らなくなります。お金を調達して事業に向かっていたら、日に日にお金が減っていくわけですから、それが常態化すれば、会社が倒産してしまうのは誰にでもわかります。したがって、全力で事業に集中したくても、常に次の資金手当てのことも考えないといけません。

会社が存続するために、資金繰りのことが頭から離れないというのは簡単に言えば、こういうことです。会社規模によらず、着金日が1日ずれていたら、支払いが間に合わなかった、そんなケースも無数にあるのです。

しかし残念なことに、いわゆる自転車操業的な経営だけではなかなかうまく回らないのが現実です。「売り上げが入ってきた後に費用を支払う」という流れになれば良いですが、規模の小さい会社だと「売り上げが入ってくる前に、支払いが生じる」ケースが少なくありません。

会社員であれば、自分がかかわった仕事の売り上げがいつ入金されるかを正確に把握している人はほとんどいないでしょう。実際、売り上げは、当月の業務に対して請求書を発行したら、翌月末に振り込まれたら早いほうで、大手企業は支払われるまでの期間が長く、翌々月末まで待つこともあります(製造業では翌々々月末ということも)。

「本当に支払われるのか、忘れられていないだろうか」と不安な気持ちを抱えながら来る「振り込み日」いや、正確には「着金日時」を待つことになります

みるみるうちに資金が「溶けて」いく

「いやいや、まとまった資金が手元にあって創業したのであれば、そこまで短期の資金繰りに奔走するはずがないのでは?」

賢明な読者の皆さんはそう思うかもしれません。たしかに、どんな社長も最初から望んで自転車操業的な経営をするはずがなく、ある程度のお金を工面したうえで事業を始めるのがセオリーです。

しかし、創業初期の企業だと、はじめから安定的に利益が出ることは稀であり、多くの場合、売り上げが予想を下回ってしまう「残念な現実」を目の当たりにします。

しかも、先に書いたように会社があるだけで費用は容赦なく外に出ていき、その費用はたいてい予想を上回ります。事業を成長させるには先行投資をせざるをえないので、人や設備、広告などにもお金を使い、気づいたら、みるみるうちに調達した資金が「溶けて」いくのです。

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