日本酒「"添加物"で伝統的造り方が減少」は問題か 「速醸」が発明されて…「簡略化の功罪」を考える

✎ 1〜 ✎ 61 ✎ 62 ✎ 63 ✎ 最新
拡大
縮小

さらに簡略化が進みます。

米を蒸す過程を省略して、生米をすりつぶして粉末化したものに水を入れて「米粉水」を作るのです。これを80度の高温にして酵素を入れると、すり潰された米が全部、オリゴ糖やブドウ糖などの糖に変わります。

これを「液化仕込み」あるいは「融米(ゆうまい)仕込み」と呼びます。

本来なら、酛(もと)を造るのに2週間もかかるのが、この「液化仕込み」なら、ほんの短時間でできるのです。

先にちょっと触れましたが、昔から日本酒は「寒造り」といって極寒の中で造られてきました寒い時期が、最も雑菌が繁殖しづらいからです。

しかし、この方法なら、コンピューターで温度管理をするから、寒造りなどは必要ありません季節を問わず大量生産が可能です。

「生酛造り・山廃仕込み」「速醸」どちらがおいしい?

では、この「生酛造り・山廃仕込み」と「速醸」はどちらがおいしいのでしょうか。

私の個人的な感想ですが「生酛造り・山廃仕込み」は「速醸」よりおいしく感じます。伝統的な生酛の力でじっくり発酵させることで、「複雑なうま味」が醸し出されるから、酒に力があります。

「生酛造り・山廃仕込み」は酸度・アミノ酸度が高く、うま味が強いのに対し、「速醸」は酸度・アミノ酸度ともに低く感じます。

ただし、酒はあくまで嗜好品です。

「速醸」「液化仕込み」は「淡麗」という言い方をされ、このほうがおいしいという人もいるわけです。爆発的人気となったブランド酒も「速醸方式」です。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT