日本酒「"添加物"で伝統的造り方が減少」は問題か 「速醸」が発明されて…「簡略化の功罪」を考える

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酒造りは昔から「一麹、二酛、三造り」といわれます。一番大事なものは「麹」2番目が「酛(もと)」、そして3番目が「もろみ」の発酵ということを表しています。

昔は、この酛を造る作業(生酛造り)が、それはそれは大変だったのです。蒸した米と麹をいくつかの小さな桶に分けて入れて、2~3時間おきに櫂棒でこね回します。これを「山卸(やまおろ)し」といいます。

この山卸しには熟練の技が必要で、何といっても厳寒の中、夜を徹して行う大変な重労働です。

今や「生酛造り」「山廃仕込み」は貴重な存在に

この際に「乳酸菌」が育つのですが、この「乳酸菌」が酒の中の雑菌を全部死滅させてくれるのです。ここで雑菌をしっかり排除しておかないと、純粋酵母が育たず、おいしい酒ができません。

この乳酸というのも、酒造りにおいてなくてはならない要素なのです。だからここで乳酸菌をしっかり育てることがひとつのポイントです。

この山卸しはあまりにも大変な作業であったこともあり、明治時代にこの工程を抜くことになりました。技術の進展もあって、山卸しをしなくても品質に変わりがないことがわかり、「山卸しを廃止してもよい」と政府からのお達しが出たのです。

この山卸しを廃止して作った酒が「山卸廃止酛(やまおろしはいしもと)」、略称「山廃(やまはい)仕込み」です。日本酒好きの人なら、みなさんもこの名前は聞いたことがあるかと思います。

「生酛造り」「山廃仕込み」は現在もいくつかの酒蔵で造られていますが、今となっては貴重な存在です。これらはちゃんとラベルに銘打って売られているので、飲んでみたい人は探してみてください。

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