株高に沸く証券界、本当に死角はないのか 国内外に潜むリスクの芽

拡大
縮小

5月下旬から6月初めにかけて、日経平均株価は12営業日連続で上昇した。株価が12連騰したのはバブル期真っ只中の1988年に13連騰を記録して以来のことである。

アベノミクスがスタートして2年半が経過した。当初8000円前後で推移していた日経平均株価はぐんぐん値を上げ今や2万円台が定着し、時価総額も初めて600兆円の大台を超えた。東京証券取引所によると、1日平均売買代金は今年に入り、2月から3カ月連続で3兆円を超えている。株式に関しては、株価の水準や売買高、売買代金とも活況を呈しているといっていいだろう。

12連騰でも上昇率は4.2%と最低

株価が12連騰したのは過去に5回しかないという大記録だ。しかし、「株価の上昇率は4.2%と過去最低。だからこそ、極端な過熱感がなく、上昇相場が長続きしている」(SBI証券)という冷静な分析もみられる。いわば、“静かなる熱狂”が今回の上昇相場の特徴と言えるのかもしれない。

週刊東洋経済6月20日号(15日発売)の特集は『証券 熱狂の死角』です。株高・好業績に酔う証券界の死角を追いました。上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

株高も一因となって証券各社の業績は好調だ。日本銀行による量的・質的緩和(2013年4月スタート)をはやし、月間の売買高が1000億株を超えたのが2013年5月のこと。その時期を含み、アベノミクス相場を存分に謳歌した2014年3月期ほどではないが、2015年3月期も証券各社は高水準の利益を計上している。

大手・銀行系5社(野村、大和、SMBC日興、みずほ、三菱UFJ証券ホールディングス)のうち、野村、日興、みずほの3社が前期比で増収増益。残る大和と三菱UFJの2社は最終減益だが、たとえば大和はリーマンショック直前の2006年3月期を上回る純利益を計上し、業績はけっして悪くない。

だが、目を凝らしてみると、証券界を取り巻くリスクの存在に気付く。

次ページ想定しないマーケットの変化も
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT