【産業天気図・鉄鋼】06年度も我が世の春。「日本晴れ」だが海外は雨嵐

企業防衛本能剥き出しの株式持ち合いが相次ぐ鉄鋼メーカー勢。その姿は、新工場など大型の設備投資計画がないので、溜まる一方のキャッシュフローを税金や投資家還元に回すことを渋っているとしか見えない。わずか数%の持ち合いで海外ファンドの株買占めや海外メーカーの乗っ取りを防げると考えている経営者が鉄鋼メーカーの中にいるとすれば、その経営者は過酷な国際競争を生き抜く戦略性を欠いていると言わざるを得ず、退陣すべきだろう。
 さて、このように時代が逆戻りしたような持ち合い強化ブームが起きるのは、2006年度がユーザーの旺盛な需要に支えられ、出荷数量は内外ともに堅調、鋼材単価の高止まりも続く、と経営者がこぞって見ているからだ。新日鉄<5401.東証>やJFEスチール(JFEホールディングス<5411.東証>傘下)など高炉各社は、国際市況の乱高下に影響されない大口需要家向け(ヒモ付き)の生産出荷比率を高め、需要が乏しい建設用を低める方針。よって自動車、建機、工作機械など海外需要が旺盛な日系メーカー向けの鋼材輸出が堅調で、しかも急速な円高が起きない限り、業績急落リスクが顕在化することはない、と踏んでいる。
 それでも「中国の動向がカギ」(新日鉄の三村明夫社長)には違いない。中国は05年の粗鋼生産高が日本の3倍に当たる3.5億トン(前年比3割弱増)に達した。中国は原料や鋼材の国際市況を左右するキャスティングボートを握っており、中国の動向次第で日本の鉄鋼メーカーの業績が上にも下にも振れるからだ。06年の中国の年間粗鋼生産は「4億トン超えは確実」とされ、動向に詳しいJFE商事ホールディングス<3332.東証>の佐藤脩社長は「日本は需給ギャップの影響を受けて輸出価格、数量とも05年度ほどはいかない」と厳しい認識を示す。よって『会社四季報』06年春号の07年3月期予想は、各社とも「微増益もしくは減益」とする慎重な見方しかしていない。とはいえ、もう1つのリスク要因である原料価格は「コークス炭が3割値下げ、鉄鉱石が1割値上げでネットでコスト増にならない」(有力アナリスト)とされ、これが『四季報』の07年3月期予想で、減益でも高水準が続くとする根拠だ。
 もっとも「我が世の春を謳歌できるのは今後何年先までか」と先行き不安を訴える中堅幹部は数多い。海外で大型設備投資やM&Aをやりたい、とうずうずしている様子だ。現経営陣の中で、こうした攻めの姿勢を鮮明に打ち出し、外資を打ち破る積極発言を行う経営者がいれば、その会社は投資妙味があると見込んで注目すべきだろう。
【古庄英一記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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