日経平均の急上昇がバブルではない「3つの根拠」 日銀が金融政策変更なら円安になる可能性も

拡大
縮小

3つ目は、バブル期と似ている、あるいはバブル期以上に株価を押し上げているかもしれないデータに触れておきたい。それは名目GDP(国内総生産)成長率と長期金利(10年金利)の関係だ。

現在、名目GDPは付加価値の単価とも言うべきGDPデフレーターの上昇を伴って直近の4四半期は4%超の基調で拡大し、0%台後半で推移する長期金利を明確に上回っている。

こうした「名目成長率>長期金利」の関係は、バブル期にあたる1980年代後半にも観察されており、それが過剰投資の温床になったとの指摘もある。というのも、この状態はマクロ的に見れば調達金利を上回る投資機会が豊富に存在する状態を意味するからだ。

仮に人々がその状態が長く続くと確信するなら、企業は借り入れを増やし投資・雇用を拡大し、同時に投資家は株式の購入を進めるのが最適解になる。これは投資家にとって「おいしい」状況と言え、それがマクロレベルで実現し過剰投資を招いたのがバブル期であった、と振り返ることもできるだろう。

日銀の本格的な金融引き締め実施は考えにくい

現在の名目GDPは国内のインフレを反映して一気に600兆円の大台を視界にとらえている。今後、日本経済が2011~2012年ごろのようなデフレに舞い戻ったりすれば話は変わってくるが、当分の間、名目成長率が長期金利を上回る状態が期待され、そうした下で積極的な投資が報われやすいと判断される。

そうなると気になってくるのは日銀の金融政策だ。日銀が金融引き締めに転じ、長期金利が上昇すれば上記の「おいしい」状態が崩れてしまう危険性がある。だが、筆者の想定通りであれば、そうした懸念は杞憂に終わる。結論を先取りすると、良くも悪くも日本の賃金動向が日銀の物価目標を上振れ方向に脅かすほどには強く伸びず、結果として金融引き締めが実施されるとは考えにくいためだ。

市場関係者の一部には日銀のインフレ退治が手遅れ、いわゆるビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)に陥るとの見方もあるが、それは贅沢過ぎる悩みと言わざるをえない。筆者は、日銀が4月にマイナス金利という極端な金融緩和に終止符を打った後、当分の間、政策金利を据え置くと予想している。端的に言えば、金融政策の正常化はそこで終わりということだ。

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT