韓国大統領が「岸田首相愛」をほとばしらせるワケ 1日でも長い岸田政権継続を願う尹錫悦

拡大
縮小

徴用工問題の政治決着がついた直後の首脳会談では、事前の事務方の協議通り、たくさんの項目で意見を一致させた。関係が上向くたびに再開で合意されながらも、実際には長く形骸化してきた、首脳同士が形式にとらわれることなく互いの国を行き来する「シャトル外交」も復活することが決まった。

前任の文在寅政権の時代には、日韓の政府間対話が著しく滞った。そのため首脳会談では、トップだけでなく「政治・経済・文化など多岐にわたる分野で政府間の意思疎通を活性化していくこととし、具体的には、まずは日韓安全保障対話及び日韓次官戦略対話を早期に再開すること」(日本政府側資料)で一致した。

これを受け、実際に各レベルでの対話が次々に再開され、それらのほぼすべてが、文・前政権の停滞期を浮き彫りにさせる「5年以上ぶり」の実施となった。

尹大統領に応えた岸田首相

トップ同士のほうは2023年3月の尹大統領の来日に続き、当初は下半期に実現できるかどうか、ともささやかれていた岸田首相の訪韓が、5月のゴールデンウィーク明けすぐに実施された。

徴用工問題の解決策発表後、野党や市民団体から厳しい攻撃を受ける尹大統領に対し、ゴールデンウィーク連休に入る少し前になって急きょ、岸田首相が訪韓準備を進めるよう実務者に指示したのがきっかけだった。

韓国政府側は驚きつつも、大歓迎する意向を伝え、東京での首脳会談でシャトル外交の復活を約束してから、わずか2カ月で両首脳の往来を実現させた。

その後も両首脳は国際会議に出席した際などに会い、会談を重ねたが、先述の2023年9月にあったニューデリーでの会談は、日本としては大きな「手土産」を携えて臨んだ。

韓国国内ではまだ、徴用工問題での大幅譲歩に対する尹政権批判が続き、日本側からの見返りにあたる「呼応措置」の乏しさへの反発も出ていた。そんな中、2030年の国際博覧会(万博)の開催地に立候補していた韓国南部・釜山に投票することを、岸田首相自ら尹大統領に直接伝えたのだ。

開催地は同年11月の博覧会国際事務局(BIE)総会で決まるが、釜山市は本命視されるサウジアラビアのリヤドと競っていた。BIE総会は秘密投票で決まる。これまで日本政府は原則として投票する国に事前に伝えておらず、極めて異例の伝達だった。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT