苦境のコーセー「雪肌精」、社長肝煎り大刷新の成算 看板ブランドで「羽生&大谷」起用の深いワケ

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コーセーの高価格帯スキンケアブランド「コスメデコルテ」の広告にも起用している大谷翔平選手は、小林社長自ら口説き落とした経緯がある。

遡ること1年前、2022年度の決算会見で小林社長は「野球をする人の肌を守る習慣を一緒に作らないかと交渉し、(大谷選手に)共感してもらえた。私自身がコミットして実現したことなので、かなり期待している」と語っていた。社員からは韓国アイドルの起用を望む声が大きかったが、社長の強い思いで大谷選手の起用が決まった。

羽生選手のCMではジェンダーレスを訴求

ブランドのポジショニングも工夫してきた。現在、若年層を中心に男性の化粧品使用率が増加しており、競合は次々に男性用化粧品を打ち出している。しかし「雪肌精 for Menなど男性用商品が何度も企画に上がってきたが、私はすべて否定してきた。男性しかダメと言ってしまっては、こちらからターゲットを狭めてしまう」と小林社長はこだわる。

たとえば羽生結弦選手が登場するCMでは「雪肌精に男性用はありません」と、性別の垣根なく使えるジェンダーレスブランドであることをアピールしてきた。こうした華々しいプロモーションが奏功し、男性を含めた若年層にも雪肌精の認知度は広がっている。

低価格帯スキンケアの台頭で、消費者の価格と価値のバランスを見る目は一層シビアになっている。中価格帯スキンケアに漂う暗雲を、雪肌精は払拭できるのか。発売40周年を迎える看板ブランドが勝負をかける。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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