「日経平均バブル超え」になったら何が起こるのか 日本株高騰の背景と株式市場が待ち受けるリスク

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2020年には、年間の買い入れ額が過去最高の7兆1366億円になり、2021年も8734億円、2022年は6309億円と買い続けてきた。

すでに、2023年末時点で66.9兆円、最近では72兆円前後に膨らんでおり、その含み益は35兆円規模と報道されている。(日経クイックニュース、2024年1月23日配信「日銀はETF売却を始めよ 新NISAを邪魔する構造欠陥(永井洋一)」)。

日銀のETF買いによって、東京の株式市場の価格形成機能は大きく歪んだ、と指摘されており、実際に同記事ではアドバンテストの26.5%を筆頭にTDK21.5%、ファーストリテイリング21.3%が、実質的に日銀が所有していると指摘する。日銀による間接的な保有比率が5%を超える銘柄は、東証プライムの4割、649銘柄に相当する状態になっている。

日銀がこのETFを保有している限り、日本株は慢性的な「売り手不足」となり、株価が高騰しやすくなる。個人投資家は、どうしても割高な株式を買うことになってしまうわけだ。

とはいえ、日銀が急激に売却することはないだろう。現在の東証の時価総額は、2023年11月末時点で約6兆ドル(約900兆円)といわれているから、市場全体からみると日銀の保有残高70兆円前後は、さほど大きなものではない。しかし、将来的に金利が上昇すれば、日銀のバランスシートは悪化するとみられ、ETFを売却しなければならない状況に陥るかもしれない。個人投資家が割高な局面で買った株式が、日銀の売りによってまた損失を抱えるかもしれない。

3.地政学リスクへの警戒感?

日本株への資金流入が増えている背景の1つには、世界中に拡大した地政学リスクの高まりがある。ウクライナ・ロシア戦争の勃発によって、世界はいきなり戦争に直面することになったわけだが、そこに加えて、昨年末に起きたイスラエル軍によるガザ侵攻も、人々の地政学リスクに対して警戒感を煽ることになった。

ヨーロッパを中心に地政学リスクが高まっている中で、海外投資家は投資先の地政学リスクの高まりに注目する。欧州を避けてアジア、アジアの中でも台湾問題を抱える中国よりも日本ということになる。

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