「自分は運が悪い」と考えがちな人の心理的共通点 「自己愛が満たされないことが原因」と精神科医

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自己愛というのは、視点を変えれば、「人に愛されたい」とか、「人に褒められたい」という欲求でもあります。周囲の人に好かれたり、認められたりすれば、承認欲求だけでなく、自己愛も満たされている状況といえます。

逆に、そうした欲求が満たされなければ、自己愛も満たされることはありません。自己愛が満たされない心の状態を、一般的には「欲求不満」といいます。

欲求不満の状態が慢性的に続くと、人に優しくしても、喜びや幸せを感じられなくなるだけでなく、相手は幸せなのに、なぜ自分は不幸なのだろう……とネガティブな方向に考えが傾いてしまいます。自分は運が悪いと思ってる人は、自己愛が満たされてないことが原因です。

自分だけ不運だと思い込んでしまう

最近は、通り魔的な凶悪事件が多くなっていますが、ほとんどの場合は、自己愛が満たされていないことが起点になっています。

「自分はなぜ、これほど社会にいじめられなければいけないんだ」とか、「俺は仲間はずれにされている」と思い込んで、自分は運が悪いから、もう生きていても仕方がない……という極端な発想に向かってしまうのです。

彼らの目には、幸せな家庭を持って暮らしている人や、きちんと仕事に就けている人が、「アイツらは運が良くていいな」と映っており、自分のことを「自分は運に見放され、神様にも見捨てられた人間」と思い込んでしまいます。

自己愛が満たされていないと、ひがみっぽくなったり、攻撃的になってしまうこともあるため、余計に孤立することになります。

凶悪事件に発展するほど追い詰められるのはレアなケースですが、人に対して優しくなるだけでなく、心のコンディションを整えるためにも、自己愛を満たすことは軽視できない大事なポイントといえます。

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和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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