身体の緊張状態を自在にコントロールする方法 トップアスリートは"脱力スキル"を駆使している

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たとえば、わきにある前鋸筋(ぜんきょきん)が使えていないまま腕を使う運動を行おうとすると、それをカバーするために肩(僧帽筋=そうぼうきん)に力が入って肩が上がる動きをするケースがあります。 

そのままこの運動を繰り返すと、知らぬ間に「肩に力が入るパターン」が形成されてしまうということです。

つまり、日常動作のパターンもスポーツ動作のパターンも、どちらも重力下でバランスをとりながら動作を遂行するというバランス戦略(抗重力戦略)であるため「身体の力み」が起こりやすいのです。

そういう理由から、脱力スキルの向上はパターンの改善に役立ちます。もちろん単に脱力がうまくなったからといって、長年培った動き方をすぐに手放せるほど甘くはありません。パターンの改善(解消と再学習)にはより専門的なトレーニングが必要です。

しかしながら、脱力トレーニングはその第一歩としては非常に有効です。

もも裏に力を入れ、前ももや腰の力みは抜くトレーニング

本稿では、例として脱力トレーニングの中からひとつを紹介しましょう。

体幹と脚のつながりを強化する「もも裏刺激」です。

『最強の身体能力』P.120-121より

2のときにこぶしで叩くのは、筋肉の「ストレッチがかかった状態で叩くと力が入りやすくなる」という性質を利用するため。

トレーニング中は上半身と股関節をうまくコントロールして、的確にもも裏の上半分にストレッチがかかった状態をつくるようにしてください。もも裏にしっかり力が入るようになることで、本来力を入れるべきではない前ももや腰の力みは抜きやすくなります。

<ここをチェック>
・お尻の位置は下げない(むしろ上がる感覚)
・腰を力まず、お尻を引き上げる
(上半身を鼠径部で正確に曲げていると、骨盤が前に倒れてお尻が上がる=もも裏上半分が正確に伸びる)

スポーツでハイパフォーマンスを生み出したい人は、ぜひ“脱力スキル”を意識して鍛えてみてください。

最強の身体能力 プロが実践する脱力スキルの鍛え方
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中野 崇 スポーツトレーナー、理学療法士、JARTA international 代表取締役

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なかの たかし / Takashi Nakano

1980年生まれ。大阪教育大学教育学部障害児教育学科(バイオメカニクス研究室)卒業。2013年にJARTAを設立し、国内外のプロアスリートへの身体操作トレーニング指導およびスポーツトレーナーの育成に携わる。イタリアのトレーナー協会であるAPF(Accademia Preparatori Fisici)で日本人として初めてSOCIO ONORATO(名誉会員)となる。イタリアプロラグビーFiamme oroコーチを務める。また、東京2020パラリンピック競技大会ではブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチとして選手を支えた。
 

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