身体の緊張状態を自在にコントロールする方法 トップアスリートは"脱力スキル"を駆使している

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もし、今スポーツでハイパフォーマンスが発揮できないとしたら、筋力不足ではなくて「パターン」に原因があるかもしれません。

パターンとは、簡単にいうと動きのクセのこと。たとえば、

・どちらかの脚に体重をかけて立ちがち

・投げるときに肩が力みがち

・蹴るときに腰が力みがち

などが挙げられます。

立っているだけで腰が緊張するのも、立つという動作で腰を固めてバランスをとるというパターンを持っていることを意味します。

このように表現するとよくないもののように感じるかもしれませんが、もちろんいいパターンも存在します。

ハイパフォーマンスを妨げる「パターン」の正体

トップアスリート、特にケガをしない選手は、このパターンが人間の構造から見て非常に効率がいいのです。

トップアスリートたちは脱力が動作パターンに組み込まれており、それゆえ無意識に使いこなせているのです。パターンは複数あり、競技の特性次第ではいいパターンを複数持っていて、状況に応じて使い分けられたりします。

逆にそうでない選手は、非効率なパターンが固定化されていることが多いです。

いつも腰に力を入れて緊張させるパターンが固定化している選手は、走るときも、パワーを発揮するときも、投げるときも、蹴るときも、同じように腰を緊張させて固めながら実行します。

もちろんトレーニングのときも腰を固めます。このようなパターンの固定化を考慮せずに“さまざまな種類”のトレーニングを行っても、実質的には「同じトレーニング」をやっていることになってしまいます。

いつも腰が張る、いつも肩や首が凝る、という場合はパターンの固定化が進んでいる可能性が高いです。

さらに、パフォーマンスアップの妨げになるだけでなく、いずれケガの大きな要因にもなり得ますので、できるかぎり早期に固定パターンの解除と効率的なパターンの再学習が必要です。

パターンは、重力がかかる環境でどのように二足歩行でバランスを保持していくかのバランス戦略(抗重力戦略)です。その人の身体の状態、つまりどこが強い・弱い・働きやすい部位・働きにくい部位・硬い・柔らかいなどの前提条件をもとにして、「こうすれば安定するな」という経験の積み重ねによって少しずつ形成されていきます。

ですので長年の生活習慣からの影響も大きく、裏を返すと幼児期からパターンが固定されることはほとんどありません。

スポーツにおけるパターンも、こういった日常動作のパターンがベースになりつつ、大きなパワーを出したり腕を速く動かしたりするときに、「こうすればなんとかうまくできるな」という学習の繰り返しによって形成されます。

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