冷ややか目線と期待、「ソニー・ホンダ」が貫く我流 1年の取り組みで見えた実験場としてのクルマ

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ホンダのノウハウや自動車部品調達能力、自動車の販売、メンテナンス網などを活用できるとはいえ、各国ごとの法規制もある中、周囲の想像を超えるようなクルマが本当に作れるのか?

いや、作れたとしても”売れるクルマ”になるのか? 新たな自動車の潮流を生み出すほどの爆発力があるのか? といった見方だ。さまざまな法規制がある自動車のジャンルでは、ソニーがこれまで築いてきた”ユーザーとの接点”を重視した商品アイデアを生かせないという意見もある。

ソニー・ホンダモビリティのEV「アフィーラ」
CES 2024では、AFEELAの運転をシミュレーションできるコーナーも設けられた(筆者撮影)

AFEELAは決してカジュアルに買える製品ではない。

まだ価格は発表されていないが、自動車としては最高峰の高性能半導体を搭載し、高速ネットワークで車内を網羅。レーザーレーダーを含む45個の多様なセンサーと5G通信機能を搭載し、車内にはOLEDの表示パネルがあらゆる場所に設置されている。

前後に配置された高出力の電動モーターは総合出力で482馬力に達し、91キロワット時のリチウムイオンバッテリーを搭載するというから、テスラの「Model S Plaid」(1596万9000円)に匹敵、あるいはそれを超えるラグジュアリークラスのクルマになることは間違いない。

はたして最終的な製品として出荷が開始される2026年までに、新規参入ブランドが価格に見合う価値を創造できるのか? 冷ややかな目線が同時に集まるのは、そうした疑いを現時点では拭えないからだろう。

“エンタメ重視のクルマ”ではない

もっとも、冷ややかな目線には、少なからぬ誤解もある。

ダッシュボードの左右いっぱいに広がるパノラミックディスプレイや、後部座席向けに配された2つのディスプレイ、360 Reality Audioのオーディオシステムなどの設備に加え、オーディオ&ビジュアル機器メーカーとしてのソニーのイメージから、”エンタメ重視”の印象を持つ読者も多いのではないだろうか。

しかし取材を通して筆者が感じるのは、ソフトウェア技術による新たな自動車の価値創造を行うため、AFEELAは自由度を限りなく上げて、開発者が新しい取り組みに携わることができる設計にしているということだ。

いわば、”SDVエンジニアの遊び場(あるいは実験場)”のような作りのクルマである。

エクステリアに関しては、1年前の試作車両では”車外とのコミュニケーションツール”に活用することを目的に、車体の前後に配されていたディスプレイは、法規制との兼ね合いからヘッドライト間に配される前面のみ採用され、後端部からは取り除かれた。

ダイナミックかつ複雑な曲面を組み合わせ、生物的な躍動感を持つフォルムを持つ車が多い現代において、”特徴がないことが特徴”ともいうべきシンプルで控えめなスタイルも、新たな試作はおおむね引き継いでいる。

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