最高値が見えてきた日本株の独歩高は続くのか? 長期的に見ればこの上昇は素直に評価すべき

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1990年以降の停滞から抜け出し、日本の名目GDPが1990年以降のレンジ(500兆円~550兆円)から抜け出し、2023年にはっきりと超えたことでもそれは証明されている。

インフレ定着をともなう経済正常化が進んでいるからこそ、いわゆる「企業の稼ぐ力」が強まった。上場企業の利益も最高水準まで増えているのだから、バブル期の1989年まで株価が戻るのは正当化できる。またPER(株価収益率)などで見ても、1990年前のバブル期よりかなり低く、株価は割高とは言えない。長期的に見れば、今の水準の株高についても、「上がりすぎ」と警戒する必要はないだろう。

ただ、短期的な日本株の独歩高にはやや警戒すべきかもしれない。今回と同様に日本株が、米欧株を大きく上回った局面としては、直近では2023年4~6月が思い出される。

当時は、就任直後の植田和男日銀総裁が慎重な対応を行う一方で、FRB(連邦準備制度理事会)が追加利上げを模索していた中で、為替市場で1ドル=130円前後から145円付近まで円安が進んだ。

このときとは違って、2024年は日米の金融政策をとりまく環境が変わっている。まず、日銀による1月日銀金融政策決定会合後のマイナス金利解除への思惑は後退した。だが、春闘賃上げの状況を踏まえ、4月会合では、日銀によるマイナス金利解除が行われると見られる。

一方で、アメリカ経済は底堅い中で、インフレ指標の下振れが明確である。FRBによる3月利下げ期待が強まる中、高官からは早期利下げ期待をいさめるような声も聞かれる。

それでも、最近のインフレの下振れを踏まえると、今後FRBのインフレ見通しが変わってもおかしくない。FRBが利下げに動く中で、過去2年弱続いたドル高円安の修正が起きると見られる中で、2023年4~6月期のように大幅な円安が進む可能性は高くない。このため、年初から続く日本株の独歩高は長期化しないのではないか。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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