台湾次期副総統「戦猫」が見せる穏健な改革路線 さまざまな試練で磨かれた「即戦力」の政治家

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充実した外交活動を送っていた中、蕭美琴が次に直面したのが頼清徳のパートナーとして総統選挙に出馬することだった。彼女はひどく葛藤したと言う。

そして躊躇した理由を次のように語った。「私が渡米した際は、コロナ禍がピークの頃で人々は外出を控えていました。それがようやく正常に戻り、私も外交の仕事に100パーセント取り組めると思った矢先のことだったのです」。

また選挙を何度も戦い、疲れていた点も付け加えた。台湾内の政治的いざこざに巻き込まれたくなかったようだ。

台湾の民主主義を守るために

同時に蕭美琴は出馬について、蔡英文総統からプライベートで声がかかったことも笑いながら教えてくれた。

「これ(副総統に就任すること)がどれだけ大変なことは知っているはず。なぜ他の人に声をかけなかったのですか、と蔡総統に伝えたのです」。すると、それまで説得しようとしていた蔡英文総統は黙ってしまったというのだ。

選挙出馬の要請を受けるにあたって、仕事や生活が一変するのは間違いない。蕭美琴はアメリカにいた際、週末、とくに在米台湾人らのイベントがない時は、よく郊外へ山登りに行っていた。仮に当選したら、台湾ではこのようなプライベートの時間は持てないだろうと語る。

しかし、熟慮の末、もう一度重責を担うことにしたのであった。

出馬を決意したきっかけについて、蕭美琴は台湾人から人生における多くの養分をいただいた今、恩返ししたいと思うようになったからと言う。

複雑な国際情勢の中で、台湾は民主主義の成果と安全や繁栄を守り、国際間でより大きな役割を担える立ち位置を見つける。これらは個人的な不便さや感情よりも重要であり、「私がやらなくて誰がやる」と考えたのだった。

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