中越パルプ工業、「夢の新素材」を開発強化する訳 「セルロースナノファイバー」で農業領域を開拓

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紙の原料であるパルプから取り出されることから、製紙各社は木材チップをパルプ化する技術や設備を生かしたCNFの開発に強みを持つ。

中でも中越パルプ工業は国内でCNFの最大生産能力で2位を誇り、国内ではあまり見られない農業用途での活用や、竹を原材料とするなど、他社と差別化した取り組みで注目を集めている。

植物の物理的な防除資材として活用

CNFが製紙会社の新たな収益源として期待されているのは、CNFを材料に混ぜたり、樹脂などと複合して活用したりすることで、さまざまな特性を発揮するからだ。

その特性はCNFを作る時の原料(針葉樹なのか広葉樹なのか)、添加する化学薬品、製造方法などによって異なり、それぞれの特性を生かして、さまざまな用途への適用が始まっている。

例えば樹脂とCNFを混ぜた複合材では、軽量で高強度の特性を生かして、自動車など輸送機器のボディや家電製品などへの採用例がある。

また、保水性や増粘性(ねばり気を高める性質)、チキソトロピー性(力を加えることで硬さが変化する性質)などを生かして、食品や化粧品の添加剤としての活用も徐々に進んできている。

中越パルプ工業が現在、注力しているのが農業分野での活用だ。

農業では、野菜や果実の栽培時に病原菌が侵入し、生育が阻害されるという大きな課題がある。農薬など科学的に除菌する方法もあるが、衛生面・環境面からも化学農薬の使用量の削減は避けては通れない。

こうした中、中越パルプ工業が開発したCNFを植物に散布すれば、病原菌の侵入を物理的に防ぐという効果が、同社と筑波大学、丸紅との共同研究から判明。防除資材としての普及に力を入れるきっかけとなった。

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