「スイカゲーム」仕掛けた東大発の中国人起業家 「日本ほど公平なマーケットはない」と上場狙う

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issinはスマートファイブミニッツのように、健康を維持・増進するヘルスケア関連の商品・サービスを提供するスタートアップだ。

「習慣化」にスイカゲームを活用

「コーチの指示通りに運動する『ティーチング』ではなく、ユーザーが自ら考えて運動する『コーチング』を促す商品・サービスを世の中に広めたい」(程氏)。ユーザーが運動を習慣化するうえで、スイカゲームの人気は役立ちそうだという。

スイカゲームは画面上で果物を落として同じ種類のものをくっつけ、進化させてハイスコアを目指す素朴なカジュアルゲームだ。

ユーザーが運動を習慣化するうえで、スイカゲームとの連携は役立つという(写真:issin提供)

もともとは中国ネット検索大手、百度(バイドゥ)日本法人の子会社でネット広告技術を手がけるpopIn(ポップイン、東京・港)が2021年4月、新規事業である家庭用プロジェクターのアプリとして開発・内蔵したものだ。その直前に中国ではやっていた「合成大西瓜」というゲームをヒントに創り上げていた。

2021年12月には、プロジェクターの知名度を上げる狙いで任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」版の配信を始めた。現在はpopInがプロジェクター事業を分離して発足したAladdin X(アラジン エックス、東京・港)がスイカゲームの権利を保有している。

著名なゲーム配信者がスイカゲームで遊び始めた2023年9月ごろから人気が高まり、240円という安さもあって12月13日には累計500万ダウンロードを達成した。

単純計算でAladdin X側に12億円超の収入を生み出したことになる。

実はこうしたスイカゲームの歩みは、程氏の連続起業家としての歩みと写し鏡のような関係にある。

中国・河南省出身の程氏は母国で大学受験に失敗し、親戚の勧めで2001年に日本に留学。東京工業大学を経て、東京大学大学院で情報工学を専攻していた2008年にpopInを創業した。

アメリカ・アップルの携帯音楽プレーヤー「ipod touch」の小さな画面の中で文字列をコピペするソフトで起業し、その後にネット広告技術へと事業を転換。これが百度日本法人の目に留まり、程氏は2015年、同社によるpopIn買収を受け入れて投資を回収する「イグジット(出口戦略)」を実現した。

程氏は百度グループ入りした後もpopInの「雇われ社長」を務める一方、社内起業で新たなビジネスに取り組んだ。それが現在のAladdin Xにつながるプロジェクター事業だ。2017年に発売した照明一体型プロジェクター「popIn Aladdin」は2021年末までに累計で25万台を販売するヒット商品となった。

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