E.クラプトンも惚れた日産の洒落者「フィガロ」 今も英国で愛される1990年代の「パイクカー」

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トランスミッションは、Be-1とパオでは5速MTと3速ATが選べたのに対し、フィガロでは3速ATのみ。この点でもキャラクターの違いをアピールしていたようだった。

パイクカー第2弾であるパオは1987年の発売。フィガロと異なり4人がしっかり乗れるハッチバックスタイル(写真:日産自動車)
パイクカー第2弾であるパオは1989年の発売。フィガロと異なり4人がしっかり乗れるハッチバックスタイル(写真:日産自動車)

価格は187万円。当時のマーチ・ターボが約110万円、パオのキャンバストップが約150万円だったことを考えても高価だった。でもBe-1から始まったパイクカーの人気はこのころも健在で、当初8000台限定の予定だった生産台数は2万台に増やされ、3回の抽選でオーナーが決まった。

きっかけはエリック・クラプトン

フィガロで特筆すべきことの1つに、海外での人気がある。とりわけ日本と同じ左側通行・右ハンドルの英国にはファンが多く、日産によれば2万台作られたうちの3000台が棲息しているとのことで、オーナーズクラブやパーツショップもある。

クラブのオフィシャルサイトを覗くと、2023年も10回以上のミーティングを行ったようで、今も活動はアクティブだ。パーツショップには外装や内装だけでなく、エンジンやサスペンションの部品も揃っている。

フィガロのインテリア。「2+2」で後席スペースが最小限であることがわかる(写真:日産自動車)
フィガロのインテリア。「2+2」で後席スペースが最小限であることがわかる(写真:日産自動車)

日本は、世界的に見ても古いクルマのパーツ供給が乏しい国の1つだ。そのため、この国で生まれた多くのヒストリックカーが、維持に苦労している。一方の英国は正反対で、名の通ったスポーツカーであれば、1台まるごと製作できるだけのパーツが手に入るという話も聞くほど。

よってフィガロの場合も、我が国にパーツがなければ英国から取り寄せるという手もあり、実行に移している日本のオーナーもいるようだ。

英国でフィガロが注目されるようになったきっかけは、エリック・クラプトンだと言われる。

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ツアーで来日中に偶然フィガロを目にして気に入り、買って帰ってロンドンで乗り回していたところメディアに取り上げられ、話題になっていったのだという。

エンスーの国でここまで支持されているクルマのエッセンスを、使わないのはもったいない。そう思うのは筆者だけだろうか。日産とアライアンスを組むルノーは、「5(サンク)」や「トゥインゴ」を電気自動車として復活させようとしている。同じプラットフォームを活用してフィガロを甦らせることは可能なはずだ。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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