宝くじ「高額当せん続出」という売り場のカラクリ 「出る」と噂の売り場に並ぶ価値はあるのか

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次に、「高額当せん続出の店で買ったほうが当たりやすい」のは本当かどうか検証していきます。

「せっかく買うのなら、1時間並んででも高額当せんがたくさん出る売り場で買いたい」というのは、「店によって、当たる確率が違うのでは?」と思っているからだと思います。ここまで読んだあなたなら気づいていると思いますが、店によって当たる確率に偏りがあるわけではなく「サンプルサイズ」の問題なのです。

なにかしらの検証をしたいときは、データを集めます。集めたデータ数のことをサンプルサイズといいます(「サンプル数」と間違われますが、正しくはサンプルサイズです)。

「確率的に、当たりやすい宝くじ売り場は存在しない」

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宝くじの場合、その店で販売された宝くじの枚数がサンプルサイズになります。100枚売れた宝くじ売り場と1万枚売れた宝くじ売り場では、どちらが高額当せん者の数が多いでしょうか? もちろん、サンプルサイズ(販売枚数)が大きいほど、高額当せん者の数も増えます。

高額当せん者が出る→出る店っぽく見える→たくさん買う人がくる→売れば売るほど、高額当せん者が出る

このような構造になっています。

「販売枚数が多い宝くじ売り場ほど、高額当せん者が出やすい」というのは、数学法則として正しいです。しかし、「過去の高額当せん者が多い宝くじ売り場で売られている宝くじほど当たりやすい」というのは間違っています。

当せん確率は、なにか細工をしていない限りどの店で買っても同じです。確率が高いことと当たる数が多いことはまったく別物です。このことをわかっていない方がとても多いのです。「確率的に、当たりやすい宝くじ売り場は存在しない」ということがおわかりになったかと思います。

サトウマイ データ分析・活用コンサルタント

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サトウマイ

国立福島大学経済経営学類卒業。一般企業就職後、26歳で独立、データ分析・統計解析事業を始める。現在は企業のマーケティングリサーチや需要予測調査、商品開発支援などを行っている。数学アレルギーから学生時代より文系の道に進むが、統計学と出会いアレルギーを克服。野村総合研究所主催の「マーケティング分析コンテスト」入賞。学生や社会人向けに、データ分析をリアル謎解きとして楽しみながら、仕事に役立つ実践的なトレーニングを行っている。

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