オイシックス髙島社長「シダックス」買収の真意 前回のTOBからわずか1年、子会社化に踏み切る

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――昨年10月下旬完了のTOBでシダックス株の28%を取得、今年1月に髙島さんがシダックスの社外取締役に就任、そして今年6月上旬に今回のスキームの検討が始まっています。このスケジュールを考えると、最初のTOBからすべて「子会社化ありき」で進んできたようにも感じます。

私たちだけが狙ってできるものではない。私は20年以上、創業家と個人的なお付き合いがあるが、それは勤一社長との関係だ。(勤一氏の父親であり)創業者の志太勤氏としっかりコミュニケーションをとれるようになったのは昨年から。さまざまな協業パターンを議論し、子会社化についてお互いの合意が得られたのが、今回のタイミングだったということだ。

車両運行事業も「ぜひ挑戦したい」

――シダックスはフード事業以外にも、車両運行事業のように既存のオイシックスの事業とシナジーが薄い事業も展開しています。給食事業だけの買収も選択肢にあったのでしょうか。

結婚と同じで、こっちの希望だけ通す、ということはできない。一方で、私がシダックスの社外取締役となる中で、その他の事業に対しても理解が深まったという面はある。

シダックスは給食事業のほかに、ヒューマンサービスと車両運行を持つ。地方自治体からの受託事業である前者はとても魅力的に感じており、特に学童保育は全国で1000カ所以上受託している業界トップだ。この分野での協業の検討も積極的に進めている。例えば、給食のない長期休暇中、学童の子どもたちに昼食、しかもオイシックスの安全な食材を使用したお弁当を提供する、といったことだ。この冬休みから一部の受託施設で実験を予定している。

確かに車両運行事業は、われわれの領域から最も遠い分野で、あまり検討は進んでいない。しかし今、ライドシェア解禁に向けて議論が進んでいる。都心部や観光地などはいろいろな議論がなされているが、地方の担い手はなかなか見当たらず、シダックス以外ないと思っている。こういう「変化の時」というのは、経営者としての血がたぎる。ぜひ挑戦したい。

――今回のTOB価格800円は、TOB公表前日の株価に対して約10%のプレミアムしか加算されていません。他のMBO案件と比べて、かなり割安ではありませんか。

安く買えた、という感覚はまったくない。水面下で交渉している間に、株価がじわじわ上がってしまい、当初想定よりかなり背伸びした金額になった。志太HDはMBOの資金を銀行から調達するため、今後はグループとしてそれを返済する負担も生じる。

今までのM&AはB to C、つまり自分たちがよく分かっている事業の買収ばかりだった。一方、シダックスはto Bのビジネス。業態を広げるために、過去にない最大規模の投資をしていく。絶対にこのチャンスを生かさないといけない、というむしろ武者震い的な感覚に近い。

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