深夜の浜松SA「トラック輸送」の現場で見た"奇策" 迫る「2024年問題」、トラック運転手の働き方改革

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遠州トラック・営業企画課長の榑松(くれまつ)弘充氏は「中継輸送をするようになったドライバーからは『以前の泊まりの運行には絶対戻りたくない』という声を聞いている。静岡に拠点を持たない運送会社に声をかけたり、大手からも協力会社に施設を紹介してもらったりするなど、利用を拡大していきたい」と語る。

低温物流大手・ニチレイロジグループ本社はコネクトエリア浜松を利用する大手の一社だ。同社の自社戦力のドライバーは約150人ほど。つまり、輸送の大半は協力会社が担っている。

そこで、現在は全国約80の拠点も活用し、中継輸送を軸とした作業効率化を進めている最中だ。同社の協力会社は約100社あり、例えば東京から名古屋の輸送は東京の会社に、名古屋から大阪へは名古屋の会社に輸送を依頼している。

梅澤一彦社長はこう語る。「東京、浜松・名古屋、大阪、広島、九州と拠点をつなぎ、トレーラーを活用した中継輸送ができるようになった。東北にも延長したい。長距離運行はドライバーの負担が大きく、嫌がる方もいる。協力会社も含めて働き方を改善し、収入も落とさないようにしたい」。

中継輸送を実施するのは全体の16%のみ

大手を軸に広がる中継輸送だが、まだ業界に浸透しているとは言いがたい。2021年の国土交通省の調査で、中継輸送を「実施している」と回答したのは全体の16%だった。

国交省は全85ページにわたる成功事例集を作成するなど、周知徹底を進める。「2024年問題を前に、中継輸送はより注目されている。自社の営業所で行う例が多いが、サービスエリアや道の駅で行われる例もある。今後も普及を促進していきたい」(自動車局貨物課)。

中継輸送には緻密な運行管理はもちろん、安定した量の荷物や拠点が必要だ。中小は難しく、大手がリードする形で浸透していくことになるだろう。コネクトエリア浜松にみられるように、道路管理者と運送会社、さらには競合同士など、会社の垣根を越えた協力関係が、今後のカギになりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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