ミスミG、AI部品調達の「革命児」が教育現場で活躍 大学・高専の3割使用、AIが部品設計の「先生」に

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メビーを学生に触らせるメリットが、もう一つある。納期に応じた価格表が表示されるため、経済的な観念も学べるのだ。「これは大学の教員には教えられない」(西籔氏)。部品の相場観を養えるほか、「どう加工すればコストが下がるのか」と考えさせられる。実践的な知識は企業に就職した後も役立つだろう。

ミスミGは今年6月、審査に合格した教育機関に対し、メビー経由で10万円分の部品をプレゼントする取り組みを開始。近畿大も応募し、採択された。

メビー製の部品を用いて作られた近畿大の教材(記者撮影)

早速、理工学部の技術員がメビーで発注した鉄板を使い、メカトロニクス用の教材を10台作成した。鉛筆削りを固定したプレートが直動移動する、「旋盤」と呼ばれる工作機械をモチーフにした小型模型だ。

11月の講義では、2年生7人がこの模型をプログラミングで制御し、鉛筆を自動で削る実習に臨んだ。教材の製作を担当した近畿大の松崎覚技術員は、「準備を大幅に短縮できて助かった。空いた時間を研究や学生の指導に当てられる」と話す。短納期で高精度な部品が手に入るという、サービス本来の趣旨でもメビーは教育に貢献している。

人材教育は未来の自社のため

メビーは2016年にサービス開始。それまでは、カタログにないようなワンオフ(一度限りの)の部品を入手する際、設計した3Dデータを2次元に落とし込み、複数の業者へFAXして見積もりを依頼するのが当たり前だった。

国内だけでなく、欧米や中国でも展開する(画像:ミスミGのHP)

ミスミGによると、1500個の部品を調達する際に計1000時間を要することもあった。それがメビーの登場で約9割短縮されたという。

製造現場の効率化への寄与が認められ、今年1月には政府主催の「ものづくり日本大賞」で最高位にあたる内閣総理大臣賞を受賞。現在も対応する素材や加工方法などを追加し、機能拡充を続けている。国内だけでなく、欧米や中国でも展開しており、担当者は「将来的には事業の柱に据えたい」と意気込む。

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