地球に迫る「大量絶滅」生き延びるための処方箋 ジェレミー・リフキン氏 スペシャルインタビュー

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そのプレイブックに基づいて解決策を練ろうとしても、たちまち壁にぶち当たってしまう。ここで必要なのは新たなビジョンであり、そこから生まれてくるのが「レジリエンスの時代」。すなわち、再野生化する地球で生き抜くための新たなプレイブックだ。

経済・社会の変革が急務

──現代文明のどこに問題があるのでしょうか。

19世紀に英国では電信技術の発達により、瞬時に通信ができるようになった。エネルギーでは石炭を燃焼させ、移動手段では鉄道が生まれた。上下水道も整備された。第1次産業革命とともに国民国家が形成されて、都市開発も進んだ。代議制民主主義も広がった。

20世紀にはアメリカが中心となり、第2次産業革命が起きた。石油が石炭に取って代わった。自動車が普及し、巨大な水力発電ダムが建設された。統治機構としては国連、経済協力開発機構、国際通貨基金、世界銀行が設立された。

これら第1次および第2次産業革命が、図らずも絶滅への道を用意した。進歩の時代を特徴づけたのは、効率性を追求した結果としての環境破壊などの「負の外部性」であり、農業でいえば特定品種の単一栽培による悪影響だ。

しかし、危機は変化のためのチャンスであり、私たちは新たな社会や経済、政治システムを構築すべき時に来ている。

──政治システムにおいてはどのような見直しが必要でしょうか。

気候変動の猛威は、国家間の境界線を無意味なものにしている。そこで取って代わるのが、「バイオリージョン(生命地域)」という考え方だ。国家の主権や地域の自治権はもちろん存在し続けるが、共通の生態系を「コモン(共有財)」として重視する統治の必要性が強まっている。

アメリカやカナダでは、北西太平洋岸地域、五大湖地域など、広域のエリアごとに、国境を越えて州などが集まり、各地域の生態系を産業や雇用などと一体で管理していく取り組みが始まっている。

とくに重視されているのが、生態系の保全や水資源の管理だ。中国でも2021年に8つのバイオリージョンが発表された。

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