半導体商社マクニカ「同業買収」の鍵はルネサス 中堅商社グローセルに対し2024年2月メドにTOB

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グローセル株式のPBRは、成長期待の低さから足元で0.5倍台と解散価値である1倍を大きく割り込んでいた。38%のプレミアムを乗せたTOB価格で換算しても0.7倍と依然1倍割れ。マクニカは買収にかかる190億円を全額手元資金から捻出できる。つまり割安な買い物だ。

「ルネサス製品と関連人材の獲得を狙って、マクニカがほかの商社をのみ込む」というパターンの再編はこの先も続くのか。ターゲットになりうるのは、新光商事、立花エレテック、萩原電気HDなど中堅規模のルネサス代理店になる。

ただ、マクニカの原社長に尋ねると否定的な答えが返ってきた。「可能性はゼロではないが、移管された製品ベースで人材に転職してもらうケースのほうが現実的。会社丸ごとでは、言い方は悪いがいろんなものがついてきてしまう」という。

グローセルはルネサス製品を販売することに特化していた。その引き締まった中身がマクニカにとって都合がよかったというわけだ。

さらなる再編の主体は2位集団?

しかし業界を見渡せば、今後も再編は進んでいくだろう。

マクニカを追う2位集団は3陣営ある。売上高5000億円前後の規模を持つ加賀電子、レスターHD、そして統合によって誕生する見込みのリョーサン菱洋HDだ。

これらの会社は統合・買収によって規模を拡大してきた。2位集団から頭一つ抜き出ようと、今後も下位商社に手を伸ばす展開はありうる。その際、ルネサス製品の販売権の大きさは無視できない要素になる。

次はどこが動くのか。生き残りをかけて、2024年も合従連衡の動きが続きそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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