がん治療に進展?新薬がもたらす延命効果 膨らむ「チェックポイント阻害薬」への期待
5月下旬、腫瘍を攻撃する免疫系の働きを活性化する新薬に、よくあるタイプの肺がんの患者の生存期間を延ばす効果があるという研究が発表された。この種の新薬の効果を示す研究が最近、相次いでいる。
また、免疫治療薬の効果が見込める患者の腫瘍には、特定の遺伝子的特徴があるとの研究も発表された。
免疫を邪魔する分子を抑え込む
この発見により、これまでは免疫治療薬が効かないと思われていた、直腸がんや前立腺がんといったがんの患者の一部にも、免疫治療薬の使用が広がる可能性がある。免疫治療薬は高価だが、これまでは主に予後の悪い皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)や肺がんでしか劇的な効果は認められてこなかった。
「(効果が期待できることを示す)遺伝子的特徴が見つかった人は、チェックポイント阻害薬を使った治療を受けるべきだ」と、ジョンズ・ホプキンス大学のルイス・ディアス准教授(腫瘍学)はあるインタビューで語っている。ディアス准教授は後者の研究論文の筆頭著者だ。
これらの研究は、5月22日にシカゴで開幕した米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。後者の研究は、米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(電子版)にも掲載された。
チェックポイント阻害薬は、免疫系が腫瘍を攻撃するのを妨げる「チェックポイント」と呼ばれる分子の働きを阻害して効果を上げる。現在、アメリカで承認されているのはメルクの「キートルーダ(一般名:ペンブロリズマブ)」に、ブリストル・マイヤーズ・スクイブの「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」及び「ヤーボイ(一般名:イピリムマブ)」がある。いずれも過去2年にわたってASCO年次総会の中心的話題となり、今年もそうだった。
3つとも悪性黒色腫の治療薬として承認されている。オプジーボは今年3月、肺扁平上皮がん(全肺がんの約4分の1を占める)の治療薬としても承認された。