YKK APに創業家出身者以外の新社長が初就任、12年度までに150億円の営業利益上乗せ狙う

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YKK APに創業家出身者以外の新社長が初就任、12年度までに150億円の営業利益上乗せ狙う

YKKグループの建材事業会社、YKK AP(東京都千代田区)では、6月9日付けで堀秀充・新社長(写真左)が就任した。吉田忠裕前社長(写真右)は、代表取締役会長CEOとなる(YKKの会長を兼務)。

YKK APは、ファスナーで成長したYKKが製造するアルミサッシなどの建材を販売する会社としてスタート。1990年にグループ内の建材事業再編に伴い、製販一体で手掛ける現体制となったが、YKK本体同様、設立当時から創業家出身者が社長を務めており、同族外として初の社長就任となる。

新社長就任に伴い、YKK APでは10日に記者会見を開催。今回の人事の背景や、今後の経営計画などについて説明した。

会見の冒頭で、このタイミングで社長交代したことについて、吉田会長は以下のように説明した。

「65歳定年制を敷いており、現在私は64歳。社長を退くタイミングを探っていたが、構造改革を終えて業績の改善したこの時期を選んだというのが1つ。より本質的な狙いとしては、経済環境、需要環境、国際環境のいずれも厳しさが増す中で、トップ層を厚くしたいという思いがあった」。

YKKの建材事業の2011年3月期売上高は、国内新設着工戸数の増加、住宅エコポイントなどで需要環境が好転したことも寄与し3084億円(前期比2%増、ただし前期は海外事業が15カ月変則)と増収。増販効果に加え、製造拠点再編や営業業務改革などの改革効果や海外事業の建て直しなどにより、営業利益は10年3月期の57億円の赤字から、一気に営業黒字化を実現した。宮城県にある東北事業所、宮城工場が被災したことで震災関連の特損(20億円)を計上、防災設備改修等への引当39億円という重石もあって最終損益は46億円の赤字となったものの、本業の構造改革や、リフォーム分野に軸足を移した事業転換は順調に進んでいるという。

堀社長は経営企画室長として現行の第3次中期経営計画(09年度~12年度)の策定に携わっており、「計画の狙いや意義について一番よくわかっている」(同)という。堀社長自身も、「自分の最大の使命は中期計画が目指す12年度営業利益189億円を実現すること」と断言。前期の営業益をベースに、リフォーム、窓事業などの成長分野で50億円、生産ラインの改善、物流改革などの構造改革により100億円、計150億円を最終年度の13年3月期までに上乗せする、という計画の実現に挑む構えだ。

堀社長は目指すべき会社像として、「メーカーの本質であるものづくりにこだわり続ける」としており、「東北の復興にも貢献していきたい」と語った。

堀 秀充■1981年YKK(旧吉田工業株式会社入社)。米国駐在17年を経て、2006年YKK AP経営企画室長。09年取締役上席常務事業本部長を経て現職。現在53歳。

(勝木 奈美子 =東洋経済オンライン)

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