日本人は「超円安」の恐怖がわかっていない! 忍び寄る「通貨危機」への準備はできているのか

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<ロシア・ルーブルショック>

アジア通貨危機はアジアにとどまらなかった。当時、原油安の影響などで財政危機に陥りロシア国債の債務不履行(デフォルト)を起こしている。この影響で、アジア通貨危機が起きた97年当時1ドル=5ルーブル台だったのが、1998年9月には1ドル=14ルーブル台に下落。1999年10月には1ドル=28ルーブル台にまで下落している。

ロシア国内ではハイパーインフレが起こり、99年には消費者物価指数が前年同月比で120%に達している。このルーブルの下落によって、アメリカのヘッジファンド「LTCM」が経営破綻。アメリカを金融不安に陥れ、FRBが救済することになった。

通貨危機が国民生活にもたらす影響とは?

この他、第2次世界大戦直後や70年代の中南米など、通貨危機に見舞われた国は意外と多い。日本もそのひとつだが、どんな影響を受けるのか。簡単に整理すると次のようになると考えていい。

① すさまじいインフレに見舞われる
② 政治が不安定となり政権交代がしばしば起こる
③ 国内企業が外国資本に買収され、既存の海外資本の企業が相次いで撤退する
④ 不動産などの国内資産が外国資本に買われる 
⑤ 政府機関等のコストカットが要求され、行政サービスが質量共に低下する
⑥ 国内の優秀な人材が流出し、海外からの出稼ぎ労働者等がいなくなる

現在進行形で進んでいるアルゼンチンペソ危機も、この1年間で食料品価格などは2倍以上になった、と報道されている。大統領選挙でもハビエル・ミレイ下院議員が「中央銀行と通貨のペソを廃止し、米ドルを法定通貨にする」という政策を掲げて大統領選に勝利した。通貨に対する信任がいかに重要かを物語っている。

実際に、アルゼンチンの消費者物価指数は、23年10月に前年同月比142.7%(日経新聞 2023年11月15日)上昇。この数字はアルゼンチンが急激なインフレで苦しんでいた1991年8月の144.4%以来32年ぶりの上昇となった。2022年の通年でも94.8%の上昇となっており、通貨の暴落はインフレとセットになる。

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