バイデンとトランプ、「究極の選択」ならどっちだ 「地政学リスクだらけ」の2024年がやって来る

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2つの戦場を1に減らし、最終的にゼロにすることが望ましいのは言うまでもない。が、それ以前に2を3に拡大しない努力が必要になるのではないか。2024年は、そんなリスクに満ちた年だと受け止めるべきだろう。

「ズレている」感が否めないバイデン大統領

壊れかけた「抑止」の機能を回復するためには、世界最強のアメリカ軍ににらみを利かせてもらう必要がある。おそらくジョー・バイデン大統領は、彼なりにベストを尽くしているのであろう。ただし、どこか「ズレている」感が否めない。

今月のバイデン氏は、サンフランシスコでAPEC首脳会議を主宰し、迎えた中国の習近平国家主席と1年ぶりの米中首脳会談を行った。

4時間にわたる会談の成果として、真っ先に挙がったのはフェンタニル規制という「丸ドメ」なテーマであった。アメリカでは鎮痛剤中毒により、年間7万5000人もの人が亡くなっている。その原料となるフェンタニルの密輸取り締まりを厳格化することで中国側が合意したのである。

確かに国内的な関心は高いだろうが、こんなことで習近平氏に「借り」を作るというのも情けない話である。今回の米中首脳会談の成果といえば、AIをめぐる政府間対話の構築だとか、米中間の直行便の大幅増便だとか、気候変動をめぐる協力拡大とか、果てはパンダの再貸与だとか、「そこがキモじゃないだろう!」と言いたくなるようなネタばかりである。

安全保障面の成果としては、米中が軍の高官同士の直接対話を再開することで合意したことが挙げられる。昨年8月のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問により、相互のホットラインは途絶えていた。このままだと、偶発的な衝突発生リスクが高いままとなるところであった。この点だけは素直に評価したい。

他方、中国側としても対中関税や投資規制の解除、半導体輸出規制の緩和など、欲しかった成果は得られていない。習近平氏としても、アメリカ側に強く出られるほどの材料は有していなかったということだろう。今回の外遊日程で中国側は、「国内向けにどう映るか」ということばかりを重視していたように見える。中国経済の不振が伝えられる中、習近平氏の政策的な自由度はさほど高くないのではないだろうか。

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