「すぐ消える芸人」と「天才芸人」は本質的に同じだ 藤子不二雄A『まんが道』のようなM-1誕生秘話

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この点、芸能以外のいろんな業界でも学べるはずである。あちこちの事例で、現場をこき使うばかりで工夫のない管理者層の取り分が多すぎないかと時に思う。

そういえば大学教育は、例えば予備校講師と比較して、どうなっているだろうか。面白い授業をしたらドカンと御褒美を出す大学もあっていい。私は貰えないが。

画期的だった「芸人同士の競争」のメイン要素化

画期的新商品の企画・開発という点でもM-1の事例は非常に面白い。

もちろんむかしから、芸人同士のライバル意識や熾烈な競争はあっただろうが、それも観客が喜ぶ演芸コンテンツのメイン要素に取り込んだ点でM-1は画期的だった(「笑点」の大喜利や「お笑いマンガ道場」での演者間の鞘当ては余興的演出に過ぎないと本稿では見做す)。

商品化されてみればそれは、笑いあり涙あり驚きありの物語コンテンツになり、類似コンセプトの後発商品として「R-1グランプリ」や「キングオブコント」などが続くことになった。

格闘技のK-1にヒントを得た島田氏のアイデアがそれだけ優れていたのである(同氏には『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する』という優れたビジネス書の著作がある)。

また、吉本興業は1982年から「吉本総合芸能学院(NSC)」という芸人養成所をつくっていたが、これは吉本が運営している各地の劇場とセットでお笑いをビジネスとして発展させるエコシステムを形成していた。

M-1の開始はそれをさらに充実させ、才能ある若手芸人に脚光を浴びせて一気に市場価値を高めるブースターの役割も果たしている。

こうした「文化産業のエコシステム戦略」を、鈴鹿サーキットをつくったホンダや宝塚歌劇団をつくった阪急電鉄と比較しても面白いはずである。

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