インドネシア高速鉄道、愛称「ウッス」開業後の姿 富裕層が車から転移、在来線特急も根強い人気

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このチマヒが今、熱い。というのも、6月1日のダイヤ改正で、1日10往復の「アルゴパラヒャンガン」号がすべて停車するようになったのみならず、パダラランで高速鉄道に接続するフィーダー快速列車も14往復すべてが停車するためだ。終日、20~30分間隔でジャカルタ方面と結ばれるようになったことで、今後はバンドン近郊の交通結節点として重要度を増すことが予想される。

チマヒ駅
高速鉄道開業に合わせリニューアル中のチマヒ駅(筆者撮影)
高速鉄道連絡フィーダー快速
高速鉄道の高架をバックに走るバンドン行きのフィーダー快速列車。チマヒ駅には全列車が停車する(筆者撮影)

一般的に、新幹線(高速鉄道)が開業すると、それまで在来線特急が停車していたものの新幹線の駅が設置されなかった街は利便性が大きく低下し、街自体が衰退するケースが多い。しかし「アルゴパラヒャンガン」号はもともと、途中にあるカラワン、チカンペック、プルワカルタという一定規模の都市を通過していた。これは、ジャカルタ―バンドン間の直通需要に応えるのに手いっぱいで、途中駅からの利用者を拾う余裕がないことが理由だ。

よって、高速鉄道が本開業した暁には、在来線特急を全廃するのではなく、停車駅を従来よりも増やし、一部の列車を存続するということも検討され始めている。それほどまでにジャカルタ―バンドン間の沿線の移動需要は大きく、高速鉄道開業で得した駅はあれど、損をする駅は発生しないだろう。

終点駅の北側エリアは「新都心」に

筆者は在来線普通列車で、日本の新幹線案で終着駅が建設される予定だったグバグデ駅へと足を進めた。最近、普通列車のオペレーターがインドネシア鉄道(KAI)から、ジャカルタ首都圏の通勤電車と同じKCIに移管されたが、実態は昔ながらの機関車牽引の客車列車である。加減速が非常に悪い割に駅間距離が短いため、最高速度は時速40kmにも満たず約25kmに1時間も要する。ただ、高速鉄道の開業に合わせて政府予算で近代化改良工事が進められており、最終的には電化される見込みである。

グバグデ駅 駅舎
グバグデ駅の駅舎。日本案では、ここに新幹線の終着駅を建設する計画だった(筆者撮影)

グバグデ駅は、バンドン中心部から街道沿いに無秩序に広がる旧市街地と、新興開発エリアの境目にある。この新興開発エリアを挟んで対角にあるのが、高速鉄道のテガルアール駅である。旧市街側にあるショッピングモールからはテガルアール駅行きのシャトルバスが発着しており、グバグデ駅も経由する。ただ、たいてい市街地で渋滞に巻き込まれ、途中のバス停の場所も不案内なため、オンライン配車アプリで車を呼んだほうが手っ取り早い。

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