沖縄「地価バブル期超え」エリア続出の潜在力 2023年の基準地価上昇率は全国トップに

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気になる今後の沖縄 焦点の一つは人口

地価が上昇し、人口が増え続けてきた沖縄だが、この先も潮流は変わらないのだろうか。気になるのは人口変動に起きた異変である。今年1月の沖縄県の日本人人口は146万4301人となり、昨年よりも減少した。昨年までは日本国内で唯一の人口増加県だったが、ついに減少県になってしまった。一方、合計特殊出生率は1.70(2022年)で過去最低だった2021年を0.1ポイント下回ったが、それでも全国トップの水準だ。

その理由について県の関係者は「低所得にコロナや物価高騰が重なり、生活に余裕がなくなったことも要因」などと分析している。人口の増減は今後の沖縄経済の状況に大きく左右されそうだ。

地価の上昇による影響はどうか。これまでは、高い出生率→人口増→住宅需要→宅地整備→地価上昇といった流れができていた。出生率低下や人口減少が続くようだと、この図式は崩壊する。また、地価高騰地域では住宅価格の高騰、賃貸価格の高騰などで住民の流出現象が起きる可能性もある。

だが、沖縄経済全体を見ると、明るい兆しは随所にある。まずは観光客の大幅回復だ。コロナ禍で落ち込んでいた入域観光客数が今年度上半期は約420万人となり、前年度同期と比べ約120万人増加した。率にして40%の大幅増。3年連続の増加で、コロナ前2019年度同期の8割近くの水準まで回復した。インバウンドも約53万人と戻ってきている。下半期は国際路線の再開や大型クルーズ船の寄港もあり、さらなる回復が見込まれている。

県の経済動向(4-6月期)も、個人消費、住宅着工戸数、有効求人倍率など好調な指標が多い。

地価の上昇率が全国トップになったという事実、さらに初めて人口が減少したとはいえ日本一高い出生率と子ども人口比率(16.3%)、そして豊かな自然と多彩な観光資源を持つ沖縄のポテンシャルの高さは、日本にあって稀有な存在だ。沖縄の今後の動向に熱い視線が注がれている。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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