「渋谷ハロウィン」規制動画に外国人が憤慨の訳 大事な意図を伝える努力をしていない残念さ

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さらに皮肉なのは、長谷部区長は同氏と区がどれだけ外国人納税者を含む外国人の安全に対して配慮をしているかを示すためにわざわざ会見を開いたのにもかかわらず、その税金で作られた動画がこれだった、ということだ。

英語話者に対する配慮の欠如は、日本では特に看板や標識で見られる。店のウィンドウに掲げられた広告や看板のほとんどはブロークンで意味が理解できない英語で書かれている。日本に長く住んでいる英語話者なら誰でも、滑稽なものからとんでもないものまで、さまざまな看板を目にしたことがあるだろう。だが、そのほとんどのものは無害だ。

だが、今回の場合は、安全性を確保するためにどうしても伝わらなければいけなかったはずだ。渋谷区がこうした動画を作ること自体は素晴らしいことだと思うが、それが伝わらなかったり、外国人に不快感を与えるだけになってしまうのはとても残念なことだ。

「英語が話せない」は言い訳にならない

長谷部区長も渋谷区職員も英語を話す人ではない、あるいは、日本は英語を話す国ではない、という弁明は、動画における不完全な英語を正当化するものではない。日本はすでに国際化に向けて大きく前進しており、多くの外国人が住むようにもなっている。そして、そういう国になっている以上、日本語を話さない人々を受け入れるために最善の策をとる必要があるだろう。

特に公的に重要なことを伝える場合においては、その内容は最高水準のものであることが望ましい。日本は言うまでもなく、国際社会の一部であり、東京は国際的都市の1つである。その国際社会のリーダーが、外国人の協力を求めていながら、外国人がそのメッセージを理解できるように努力しないと言うことは、対外的にどんな意味を持つと考えるだろうか。

今後、渋谷区長、あるいは国が、外国人に向けて英語でメッセージを発信しようとする場合、特に(今回のように)生死を分けるようなメッセージであれば、対象者の感性を持った人の力を借りて、メッセージを作成したり、理解できるかどうかを確認したりすることを強くお勧めする。長谷部さん、必要なら喜んでやりますよ。

バイエ・マクニール 作家

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Baye McNeil

2004年来日。作家として日本での生活に関して2作品上梓したほか、ジャパン・タイムズ紙のコラムニストとして、日本に住むアフリカ系の人々の生活について執筆。また、日本における人種や多様化問題についての講演やワークショップも行っている。ジャズと映画、そしてラーメンをこよなく愛する。現在、第1作を翻訳中。

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