リコーの変わり種カメラが切り拓いた新境地 YouTubeの対応で360度撮影が浸透

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普及し始めたのは、2号機の「THETA m15」が投入した2014年11月頃からだ。2013年に発売した1号機が静止画しか撮れなかったのに対し、2号機は動画に対応。カラーバリエーションも1色から4色に増えた。「具体的な台数は公表していないが、2号機になって1号機の3倍売れるようになった」(広報)。

家電量販店大手のビックカメラも「カラーバリエーションが増えたのが大きい。写真はすべてスマホで済ませているような20代の男女が興味を持って買って行くようになった。旅行に持って行くことが多いようだ」と売れ行きの変化を口にする。

円形のテーブルの周囲に座っていても、全員を撮影することが可能

追い風も吹いている。今年3月に動画共有サイトの最大手ユーチューブが360度パノラマ動画に対応。フェイスブックも同月、360度パノラマ動画に対応する予定であることを明らかにした。2つの巨大な動画プラットフォームの対応によって、360度パノラマ自体の普及が進みつつある。

そもそも、リコーはなぜシータを開発しようと思い立ったのか。きっかけはSNSの普及だという。現在シータの開発を取り仕切っている野口智弘VR事業室長は「SNSによって、なんとなく写真を撮るという需要が増えた。一度に360度すべての風景を撮ることが出来ればそういったニーズを満たせると考えた」と、2010年の開発当時を振り返る。

こだわったポイントは手軽さだ。「今まで特殊な用途にしか使われていなかった360度パノラマをもっと気軽に楽しめるようにするためには、小さく、そして安くする必要があった。重さ100グラム以下まで軽量化し、2号機からは生産を中国に移すことで3万5000円まで値段を下げた」(野口氏)。

開発プラットフォームを開放

現在のシータの普及を牽引しているのは、「ガジェット好き」の存在だ。シータは開発プラットフォームを開放しており、誰でもシータを操作するスマートフォンアプリを作ることが出来る。「思っていた以上に様々なアプリが出てきている。なかでも面白かったのは、シータを上に放り投げたら一番高い地点でシャッターが切れるアプリ。また、4月にアップルウォッチが発売されると、すぐにアップルウオッチから操作できるアプリができていた」と野口氏は言う。

次の3号機についても、新たな要素の追加を検討中。着実な進歩が360度パノラマ撮影の浸透を後押ししそうだ。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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