原子力の平和利用を再検証し、ポスト原発を視野に議論を

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原子力の平和利用を再検証し、ポスト原発を視野に議論を

レベル7と史上最悪となった東京電力福島第一原子力発電所事故。原因として天災と人災の両面が指摘されている。事態は依然収束せず、日本の原発技術や運転能力、安全対策への信頼が高かっただけに、海外にも大きな衝撃を与えている。

“フクシマ”にドイツのメルケル首相は素早く反応した。1980年以前に建設された古い原発7基の緊急停止を決定。早期に脱原発を実現する法改正を目指す。原子力が歴史的な転換期を迎えている。

軍事利用から平和利用へ

原子力平和利用のシンボルである原発は、国際的な枠組みの中で推進された。その歴史を振り返る。

核兵器生産のために米国で原子力技術が生まれた。だが、ソ連(49年)、英国(52年)の核実験成功により、米国の核独占は崩れる。53年アイゼンハワー米大統領は「平和のための原子力」と題する国連演説で、米国の原子力政策を転換する。米、ソ、英が核兵器保有の既得権を享受しながら、原子力技術や情報をほかの国に与える政策だ。原発で原子炉を運転すると、使用済み核燃料から原爆の原料が取れる。原子力平和利用による核兵器拡散のリスクを阻止する、国際的な枠組みが同時期に作られた。57年に設立されたIAEA(国際原子力機関)だ。

ただ、IAEA設立後も、60年にフランス、64年に中国が核兵器を保有する。米ソもこの2カ国の既得権を認める。その結果、現在の国連常任理事国5カ国を「公認核兵器保有国」と位置づけ、それ以外の国に核保有が広がるのを防ぐことを目的したNPT(核拡散防止条約)が70年に発効する。しかし、「公認核兵器保有国」以外にもイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮が核兵器を保有している。また、イランもウラン濃縮を進めて、核兵器保有を目指していると米国など国際社会から非難され、経済制裁を受けている。

日本の原子力平和利用は、米国の政策転換と技術支援を受けて実現した。55年に国会で可決された「原子力基本法」が出発点となった。61年には原子力賠償法が制定された。この法律では、事故が起きた場合、一定の条件付きで、国が事業者の損害賠償額を負担すると規定。原子力事故リスクに尻込みする事業者の背中を国が押す形になった。

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