経済衰退・少子化「非正規雇用が元凶」という俗説 増えた非正規はほぼ「45歳以上の女性と高齢者」

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総務省の統計によれば、1988年における男女合わせた正規雇用者の全従業者に占める割合は、81.7%でした。これが、2020年には62.8%まで低下しています。約20%の下落は大変大きな変化です。

また、非正規雇用者の給与は正規雇用者より少ないので、このように正規雇用者が減ってしまったのは、懸念すべき出来事なのは間違いがありません。

「正規から非正規への入れ替え」は限定的

このように正規雇用者の全従業者に占める割合が大きく下がった理由としては、以下の2つのシナリオが考えられます。

(1)正規雇用が非正規雇用に入れ替えられた
(2)新たに非正規で雇用される人が増えた

(1)を支持する人もたくさんいますが、実際に起こったのは、このシナリオはではありません。

実際のデータを確認すると、非正規雇用者の増加は、正規雇用から非正規雇用への移行ではなく、新たに非正規雇用者として雇用される人が増加したことに起因しているのが明らかになります。

正規雇用者は1994年のピークから275万人も減少しましたが、1988年と比べると153万人増加しています。

これに対し、非正規雇用者は1988年から比べて1336万人も増加し、1994年との比較でも518万人増加しています。

このように、非正規で雇用される人が増加したことが、非正規雇用者の構成比の上昇を引き起こしたのは明らかです。

実際、全雇用者は1988年に比べて1489万人増えたのですが、その内、非正規が1336万人で、増加者の89.7%を占めています。

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