ミシュランが誇る低燃費性能高級タイヤの実力 脱炭素と循環型経済への対応も求められる

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ただ、それだけでは持続可能なタイヤとはいえない。なぜなら、タイヤは“消耗品”だからだ。つまり、同時に交換頻度を減らすという問題も解決していく必要がある。その1つが耐摩耗性の向上だが、それと同じくらい大きな課題の1つが「パンク」だ。

世界ではパンクによる早期廃棄タイヤは年間2億本(200トン)といわれているが、これらの解決のためにミシュランはエアレスタイヤを開発。すでにエアレスタイヤの「ミシュラン・アプティス・プロトタイプ」がシンガポールの公道を用いて試験走行が進められている。

これ以外にも、2050年までにCO2排出量実質ゼロの生産工場の構築、輸送時のCO2排出量削減(消費地に近い場所での生産)など、「作る」「運ぶ」「使う」に加えて「使った後」までそれぞれの段階でライフサイクルを考慮したモノづくりを進めている。

トータルパフォーマンスを掲げる意図

さらに驚きなのは、ミシュランは「タイヤを売る事」がなりわいにもかかわらず、「たくさん売る」ではなく、なるべく少ないタイヤで済むようなビジネスを考えている事である。その1つが古くからタイヤに求められるすべての性能を兼ね備える「トータルパフォーマンス」を掲げて商品展開を行っている事だ。

スポーツに属する「パイロットスポーツ4S」は、実は快適性も高い(写真:ミシュラン)

現在、ミシュランのタイヤラインアップを大きく分けると「スポーツ」、「コンフォート」、「スタンダード」の3つに分類されるが、他社のそれとは違うのは、ミシュランとして必要な総合性能を盛り込んだうえで「より注力したい性能を高める」をポリシーにしている事。例えば、スポーツに属する「パイロットスポーツ4S」は、実は快適性も高い。逆にコンフォートに属する「プライマシー4+」は、実は運動性能も高い……などが挙げられる。

性能に対するハードルが高いので開発期間は他メーカーと比べると長めだと聞くが、長期間パフォーマンスを維持できるため頻繁にモデルチェンジする必要がない。これも結果としてサステナブルといえるだろう。ただ、最近は求められる性能要求も増えているため、以前より世代交代は早めだ。

悩ましいのは「特別」や「専用」が大好きな日本人に、「トータルバランス」というキーワードが、逆に「個性が薄い」「どっちつかずの性能」というニュアンスに取られてしまいがちな事だろう。

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