「成績が良いといじめられる」日本人の特殊性 差異や異質を求める「異年齢学級」の役割

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異年齢学級の目的は、均質性とは正反対の、「差異」や「異質性」を集団内に求めることにある。

学級内でさらに年少〜年長の混成グループに分かれ、自分たちでテーマを決定し、「遊び・学び・対話・催し」をバランスよく行う。その中で、教え合い、助け合い、また年上は年下に模範を示そうという自覚が生まれる。「学び」の場合も一斉授業ではなく、子ども同士、わかる子がわからない子に教えるというスタイルが基本だ。

そこでは、子どもたちの「生きる力」「学ぶ力」を引き出すために、先生の役割は、一方的に「教える」立場のティーチャーから、子どもたちの学びを「支え見守る」コーチャー(コーチする人)へと変わる。

現在、方県小学校でこの活動を主導しているのが、松岡猛校長だ。松岡先生は、前任の岐阜市立則武(のりたけ)小学校でも同様の取り組みを実施されてきた。

「学ぶ力」を信頼したら、いじめが減り、成績もアップ

松岡先生によれば、こうした異年齢学級の導入で「いじめが減った」という。

学年制学級だと、いわゆる“落ちこぼれ”の子は多くの場合、小学校6年間ずっと“落ちこぼれ”のレッテルから逃れられない。ところが例えば3年生の中では落ちこぼれとされる子も、1・2年生を含むグループの中なら状況は大きく変わる。

「学級では目立たなかった6年生の児童が、異年齢学級ではリーダーとして活躍していたそうです。その姿を見た先生が、『あの子にこんな一面があるとはびっくりです。あの子の可能性を引き出すのは、異年齢の環境だったんですね』と話してくれました」と松岡先生はうれしそうに教えてくれた。

子どもたちは年少〜年長へと立場を変えながら3年間成長し、また次のクラスでは年少となる。さまざまな立場を経験することで、自分より弱い者への理解を深めるだけでなく、自信のある分野では頭角を現すことにも躊躇がなくなる。

自分の強みを受け入れてもらい、互いに素直に認めあえる環境の中で、いじめが減るのは想像にかたくない。

また、異年齢学級で誰かに頼られ、ものを教えると、自分自身の学習理解も進む。自分がどこをどれくらいわかっているか、あるいはわかっていないかが、わかるからだ。

松岡先生はさらに普段の授業にも、互いの違いを認め学び合う学習法「学び合い・自由進度学習」を導入した。

その結果、則武小学校の子どもたちは主体的に学習に臨む姿勢が見られるようになり、学習面でも著しい効果を上げた。算数では中間層の子どもの平均点が30点ほど上昇したという。

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